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 日米原子力協定が16日、30年の満期になって自動的に延長となる。日本の原子力政策の根幹とされる「核燃料サイクル」を支えてきた協定だ。

 核燃料サイクルとは、原発の使用済み燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを再び発電に使うことをいう(図)。政府は半世紀以上にわたって「資源を輸入に頼る日本にとって有意義だ」と旗を振ってきた。

 プルトニウムは原爆に転用できるため、核不拡散条約(NPT)の下では非核保有国による再処理は許されていない。ただ一つの例外が日本である。

 この特権を保障してきた日米協定が自動延長されることで、今後も核燃料サイクルを続けていくことに支障はない。

 だが、いまやプルトニウム利用の合理性は失われている。政府は核燃料サイクルの破綻(はたん)を認め、撤退を決断するべきだ。

 ■国際社会の厳しい目

 使うあてもないまま日本がもつプルトニウムをとりまく環境は厳しさを増している。

 日本は国内に10トンと英仏に37トンのプルトニウムをもつ。原爆6千発をつくることができる量だ。「核拡散や核テロにつながる」と国際社会が不安を募らせるのも無理はない。

 米国内にも日米協定への否定論は根強い。議会や外交・不拡散の専門家の間には「日本が呼び水となって韓国やサウジアラビアなどにプルトニウム利用が広がるのではないか」「北朝鮮との非核化交渉で日本のプルトニウムが障害になりかねない」といった懸念の声がある。

 かねてプルトニウムの徹底管理を求めてきた米政府も、いっそう要求を強めている。

 このため内閣府の原子力委員会は、新たな方針を検討せざるをえなくなった。プルトニウムの保有量に上限を設け、発電に使う分しか抽出しないよう再処理を制限する見通しだ。

 ■プルトニウムの現実

 だが、プルトニウムの保有量が大きく減るとは思えない。今月初めに閣議決定されたエネルギー基本計画は「プルトニウム保有量の削減に取り組む」としたものの、説得力のある削減プランを示していない。

 プルトニウム消費の本命である高速炉は、原型炉もんじゅの廃炉で開発が行き詰まった。後継の実証炉をつくるめどはない。政府はフランスの実証炉アストリッドへの参加を検討しているが、実用化できるとしても60年以上かかるとみられる。

 一方、プルトニウムをウランと混ぜたMOX燃料を原発で燃やすプルサーマルも、福島第一原発の事故を境に停滞している。再稼働した5原発9基のうちプルサーマルができるのは4基で、電気事業連合会がめざす16~18基にはほど遠い。

 そもそも現在、ウランの供給は安定しており、再生可能エネルギーも広がりつつある。コストの面でもエネルギー安全保障の面でも、わざわざプルトニウムを使う理由はない。

 いま政策の転換を決断せずに青森県六ケ所村の再処理工場とMOX燃料加工工場を稼働させれば、40年間の操業や設備投資などに12兆円近くかかる。破綻した政策の延命に巨費を注ぎ、電気料金の形で消費者に負担させ続けるのは理不尽である。

 ■使用済み燃料の処分

 自動延長後の日米原子力協定は、一方が半年前に通告すると破棄される。米政府の方針が変われば、日本の核燃料サイクルはたちまち窮地に陥る。そうなってから慌てても遅い。

 政策転換にともなう混乱を最小限に抑えるための議論を、早く始めなければならない。

 核燃料サイクルから撤退すると六ケ所再処理工場の運転開始はなくなり、地元の自治体財政や雇用の問題が浮上する。保有するプルトニウムを英国などに引き取ってもらえないか交渉する必要も出てこよう。

 中でも難しい問題は、使用済み燃料の取り扱いだ。

 六ケ所再処理工場では全国の原発からきた使用済み燃料が操業を待つが、再処理から撤退すればすべて廃棄物となる。歴代の青森県知事と経済産業相は「青森を廃棄物の最終処分地にしない」との約束を交わしており、政府は対応について県と誠実に話し合わねばならない。

 長年にわたる政策の手じまいは容易でない。地元や事業者、専門家の声をもとに着地点を見つけるのは政府の責任である。

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