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 西日本豪雨で、体育館や公民館などで寝泊まりしている人は、いまも約5千人にのぼる。

 硬い床に所狭しと敷かれたブルーシートや毛布。疲れた顔で雑魚寝する被災者。

 何度も自然災害に見舞われてきた国でありながら、驚くことに、避難所の光景は半世紀以上、あまり変わっていない。無意識のうちに「避難所とはああいうもの」と思い込んでいないだろうか。

 今回、変化の兆しが生まれている。事前の生産業者との防災協定にもとづいて、岡山県倉敷市は、避難者全員分の段ボールベッドの配給を要請した。広島県や愛媛県でも導入の動きがある。これを機に避難所のあり方の「標準」を変えていきたい。

 大きな災害では、避難所暮らしが数週間に及ぶことは珍しくない。あんなにひどい空間にずっといたくはない。でも居ざるを得ない。避難所でないと支援物資が届かない。多くの人がそう我慢してきた。

 避難所の環境を改善することは、大切な課題だ。混乱している発災直後はやむを得ないとしても、体育館などの床で横になる生活を続けていると、エコノミークラス症候群になる恐れが大きい。人の出入りで持ち込まれる泥やほこりを吸いやすく、呼吸器障害も懸念される。

 内閣府もこうした点を踏まえ、16年に定めたガイドラインで「継続的な避難者には簡易ベッドの確保を」と促している。

 体調の悪化、さらには災害関連死を防ぐだけではない。段ボールベッドには、足音が気にならず眠りやすい▽他人の視線を防ぐ仕切りがつけられる▽寝台の下を収納に使える、といった利点もある。

 段ボール業界と防災協定を結ぶ自治体は、熊本地震の後に急増した。

 しかしその後も、都道府県が協定を結んでいることを被災市町村が知らずに支給を要請しない例や、現地に届いているのに「日本人は床で寝るものだ」とお蔵入りさせてしまうケースがあったという。

 せっかくの取り組みも、周知が行き届かず、生かされなければ意味がない。政府は今回、被災地からの要請を待たない「プッシュ型」支援の対象物資に段ボールベッドを加えた。引きつづき、避難所環境の底上げに旗をふってほしい。

 高齢者や妊娠した女性、障害者など、さまざまな人が避難所には集まる。ベッドだけでなくトイレや食事なども含めて、被災者の「我慢」を当たり前としない避難所にしていくべきだ。

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