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 家計の消費を増やし、経済の好循環を生むには、賃上げをさらに進めることが必要だ。

 連合がまとめた今年の春闘の最終回答集計によると、賃上げ率は定期昇給込みで2・07%、ベースアップ(ベア)分は0・54%だった。いずれも昨年をやや上回ったが、組合側が要求した定昇込み4%、ベア2%には程遠い水準にとどまった。

 昨年度の消費者物価は前年度比0・7%上がっており、今春闘のベア分ではそれをカバーできていない。平均でみたとき、実質的な月給はほぼ横ばいを続けているといえる。

 一方、やや前進したところもある。連合の神津里季生会長は先月末の会見で「中小が大手を、非正規が正規を上回るという成果が年を追ってあらわれている」と今春闘を評価した。

 確かに「底上げ」の進展は一つの成果だ。加えて、賞与の伸びや仕事に就く人の増加もあり、経済全体でみれば雇用者の所得はある程度伸びている。

 だが、空前の高水準が続く企業利益や、手元にためこんだ現預金の増え方と比べれば、賃金の伸びは依然、見劣りする。このままでは、経済成長の足を引っ張りかねない。

 ここ数年、様々な経済指標が改善するなかで、いまだに力強さを欠くのが家計消費だ。要因は単純ではないが、何より所得の安定的な伸びが見通せなければ、家計も財布のひもを緩めにくい。収入の基本になる月給を増やすことが重要だ。

 世界経済には、米国の保護貿易主義が暗雲を投げかけている。安定成長を持続するためにも、家計消費を軸とした内需の着実な拡大が必要であり、賃上げがその礎になる。

 賃上げのためには生産性上昇が必要だという議論もある。一般論としてはそうだろう。だが、振り返ってみれば、20年前の金融危機以降、賃金の伸びが生産性の伸びを下回る状況が長く続いた。企業はコストカットにいそしみ、賃金を抑え、正規社員を非正規に置き換えた。

 企業業績が大幅に好転したいま、こうした流れをはっきり反転させ、働き手にしわ寄せした分を払い戻すべきである。賃上げや正規社員化の流れを、さらに進めることが必要だ。

 最近、人手不足を背景に外国人の働き手が増え、政府は新たな在留資格を設ける方針を打ち出した。海外に門戸を開くこと自体は歓迎だが、企業が低賃金労働への依存を続けるのが目的ならば、展望は開けない。国籍を問わず、十分な賃金を払うことが、欠かせない条件になる。

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