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 他人のたばこの煙を吸わされ、知らないうちに健康がむしばまれる。そんな理不尽な話はいつになったらなくなるのか、疑問は残ったままだ。

 東京五輪・パラリンピックに向けて、受動喫煙の防止をうたった健康増進法の改正案が、参院で可決・成立した。規制の強化に反発する自民党の抵抗で、対策の多くが骨抜きにされた、いわくつきの法案である。

 焦点となった飲食店の扱いでは、個人や中小企業が営む既存の小規模店での喫煙が当面認められた。全国の半数以上の店がこれに当たるというから、「屋内禁煙」の原則と例外が逆転していると言わざるを得ない。

 そんな状態をいつまで続けるのか、加藤勝信厚生労働相は「適切に判断する」と述べるだけで、見直しの時期は不明だ。何をもって「既存店」と判断するのかについても、あいまいな部分が依然としてある。

 子どもや多くの人が訪れる国会や裁判所が、全面禁煙でないのにも首をひねる。厚労省が昨年春に示した法案の骨子では、「官公庁」全体が全面禁煙だったのに、国会提出時に「行政機関」に後退し、建物内に喫煙室を設けることが可能になった。たばこを吸う議員に配慮したのか。厚労省によれば、世界保健機関が全面禁煙を求める相手には国会も含まれる。ここでも国際基準を逸脱している。

 それでも、今よりは公共施設の環境は改善される。小さな一歩ではあるが、これを足場に次のステップに進むしかない。

 法律に先立ってできた東京都の条例は、従業員を雇う飲食店を原則禁煙とした。都内では8割以上の店が該当するとされ、国の施策よりは前を行く。

 ただし、その都条例でも専用室での喫煙は許される。日本も加盟するたばこ規制枠組み条約の指針は、こうしたやり方を認めていない。受動喫煙の実態を調査・把握し、対策を強化していく必要がある。

 受動喫煙対策にいち早く乗りだしたのは神奈川県で、09年に独自の条例を制定した。今回の改正法よりさらに緩い規制だが、それでも抜き打ち検査で、飲食店を中心に毎年約1千件の違反が確認されている。

 業者に自主的な対応を促すのが目的で、罰則はあえて適用していないというが、法律や条例を定めても守られなければ意味がない。政府としても神奈川の状況を検証して、今後の対策に生かすべきだ。

 「屋内全面禁煙」という世界標準に近づくための、継続的なとり組みが求められる。

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