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 日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)に署名した。世界の貿易額の約4割を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。米国発の保護主義の広がりを止める足がかりにしなければならない。

 双方の議会の承認手続きを経て、来年3月末までの発効をめざす。最終的に日本側は全品目の94%、EU側は99%の関税を撤廃する。

 日本の企業は自動車や電気機器などの輸出拡大が期待でき、消費者もEUから輸入されるチーズやワインなどを安く買えるようになる。競争を迫られる農家や食品業者への影響に目配りしながら、経済の活性化につなげていきたい。

 米国のトランプ政権が保護主義への傾斜に拍車をかけているだけに、日欧が協力して立ち向かう姿勢を鮮明にした意味は大きい。

 米国は安全保障を理由にした鉄鋼とアルミニウムの輸入制限で日本やEUも対象とし、EUは対抗措置に乗り出した。中国には知的財産の侵害を理由とした制裁関税を発動し、中国が報復、双方が第2弾の実施に踏み切る可能性もある。さらに米国は輸入車と自動車部品の関税の大幅引き上げも検討している。

 トランプ政権の暴走を止めるのは容易ではない。

 しかし二国間の交渉にこだわる米国を置き去りにする形で、自由貿易の枠組みを広げていくことは、事態を打開する糸口になり得る。自由貿易の輪に加わらないことの不利益を、米国の企業や農業者が感じ、米政府に姿勢を変えるよう求めることが期待されるからだ。

 日欧EPAの署名をテコに、日本は他の貿易自由化の議論も急ぎたい。

 米国をのぞく11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)はきょうまで開く首席交渉官会合で、協定発効後に新たに参加する国の条件などを話し合う。年内の大筋合意をめざす東アジア地域包括的経済連携(RCEP)についても、高水準のルールづくりでどこまで中国などを説得できるかが問われている。

 自由貿易網を幾重にも張り巡らせることは、トランプ政権への対抗措置となるだけではない。新たな国際経済の秩序を形作ることにもつながる。

 中国などの台頭で今後、米国の存在感が相対的に低下することは避けられず、米国を中心とした戦後の世界経済秩序も変革を迫られる。米国だけに頼らずに多国間の協調体制をどう取り戻すのか。その一歩としても、日欧のEPAの役割は大きい。

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