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 土用丑(どよううし)の日に、ウナギのかば焼きを食べる。そんな風習が過去のものになる瀬戸際が、近づいているのかもしれない。

 ニホンウナギは、春にかけて海岸近くにきた稚魚をとり、養殖池で育てる。国内で今年4月末までの漁期にとれた稚魚は、史上2番目に少なかった。

 国際自然保護連合は2014年に、ニホンウナギを絶滅危惧種としてリストに載せた。環境省も、漁獲量の激減を踏まえ「近い将来、野生での絶滅の危険性が高い」と認定している。

 そうした危機的状況にもかかわらず、ニホンウナギについては、科学的な根拠に基づく資源管理がまったくできていない。

 日本、中国、韓国、台湾は、15年以降、養殖池に入れる稚魚の量に上限を設けている。14年の実績から2割減らした値だが、「その範囲ならば資源の量は減らない」といった裏付けがあるわけではない。

 ニホンウナギがどのぐらい生息していて、自然に増える量はどれだけなのか。ほとんど分かっていない。遠くマリアナ諸島付近で産卵するといった複雑な生態があるにせよ、他の魚種と比べても把握の遅れが著しい。

 海部健三・中央大学准教授らの最近の論文は、岡山県のニホンウナギを分析し、天然個体の数が大きく減る傾向にあると指摘している。「ニホンウナギ全体の資源量の動きを反映している可能性がある」という。

 日本政府は中国などにも呼びかけ、資源管理の基礎になるデータの把握を急ぐべきだ。ウナギを大量消費してきた国の責務だろう。予防的に一段と厳しい規制を検討することも必要だ。

 漁の実態が不透明なことも問題だ。国内での稚魚の採取には都府県知事の許可が必要で、取った量を報告する義務がある。しかし、実際に報告があるのは採取量の半分程度で、無報告や密漁が横行している。

 こんな状態が続けば、せっかくのウナギも、味わうのをためらわざるをえない。今の世代で「食べ尽くす」ような愚を犯すわけにはいかないからだ。

 大手量販のイオンは、2023年までにニホンウナギはトレース(追跡)可能なものしか扱わないようにする方針を発表した。どこでとれた稚魚を育てたのか、確認できるようにするという。あわせて、インドネシアウナギの持続可能な養殖にとりくみ、国際的な認証を目指す。

 漁の現状を見れば、トレース徹底や認証のハードルは低くない。官民問わず、かけ声だけでなく実効性のある取り組みを広げるべきときだ。

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