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 国のあり方に深く関わる法案なのに、十分な審議をせず、数の力で押し切る。そんな光景がまたも繰り返された。

 カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案が、参院本会議で与党と日本維新の会などの賛成により可決、成立した。

 民間事業者が会議場やホテルをつくり、核となるカジノの収益で運営する。それがIRだ。

 刑法が禁じる賭博を例外的に認めるもので、法案は事業者の資格要件をはじめ、251もの条文から成る。にもかかわらず審議時間は衆参あわせて40時間ほど。説明を聞いても疑問はふくらむばかりで、理解が深まったとは到底言えない。

 たとえばギャンブル依存症が増えるとの懸念に、安倍首相は「世界最高水準の規制」で臨むと答弁した。だがその柱は「週3回、28日間で10回」の入場制限だ。それだけ賭場にいれば依存症に陥る恐れが十分あると、多くの専門家が指摘する。

 便利だという理由で、事業者が客に金を貸すことも認められた。のめり込むのを後押しすることにならないか。また、施設面積の上限を1万5千平方メートルとする当初の考えは消え、巨大カジノが可能となった。全国にはパチンコ店や競輪、競馬などの公営競技場が数多く存在する。さらにカジノも加われば「賭博大国」の名がふさわしい。

 政府は、収益の30%を事業者から徴収して立地自治体と折半すると言って、税収増の夢をふりまいている。しかし、どれだけの経済効果が期待できるのかとの問いには、「どんな施設ができるか未定なので見通しを提示できない」と繰り返し、モデルケースを設けての試算もしていない。治安の悪化や暴力組織の進出など、他国のカジノ周辺で起きている事態への具体的な対応策も示されなかった。

 結局、収益は運営ノウハウのある外資の業者に流れるだけではないか。この声にも納得のゆく回答はない。既に海外のカジノ企業は頻繁に説明会を開くなど、動きを活発化させている。

 昨年2月、安倍首相が米国で全米商工会議所との朝食会に参加した際、トランプ大統領の有力支援者であるカジノ企業の代表が同席したことが、国会審議で明らかになった。

 導入を急ぐ背景に米側の意向があるのではないかと野党がただしたが、首相は否定した。今後、開設場所や事業者を決める際には、徹底した透明性・公平性の確保が求められる。

 誘致をめざす自治体も問われる。真に地域のためになるか、冷静な分析と判断が必要だ。

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