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 憲法が「国権の最高機関」と定めた言論の府の惨状も極まった。安倍1強政治のおごりがもたらした民主主義の危機は一層深まったと言わざるをえない。

 きょう閉幕する通常国会で、政権与党は働き方改革法、参院の定数を6増やす改正公職選挙法、そしてカジノ実施法を次々と強行成立させた。

 一方で、行政の公正性や政治への信頼を深く傷つけた森友・加計問題は、誰一人政治責任を取らぬまま、真相解明はたなざらしにされた。

 巨大与党を従えた長期政権の弊害が、国の統治を根腐れさせようとしている現状を、これ以上見過ごせない。

 ■説明せぬ政権の不実

 行政府を監視し、熟議を通じて、より幅広い国民の理解を得ながら法律をつくる――。そうした国会の機能をこれほど形骸化させた第一の責任は、安倍首相にある。

 昨年の通常国会から追及が続く政権をめぐる問題は、今春以降、新たな局面を迎えた。

 森友学園との国有地取引をめぐっては、財務省による決裁文書の改ざんや交渉記録の廃棄が明らかになった。首相の妻が名誉校長を務めていた学園に特別な便宜が図られたのではないかという疑惑は、国民の「知る権利」を侵し、民主主義の土台を掘り崩す事態にまで発展した。

 加計学園の獣医学部新設では、首相と加計孝太郎理事長が面会し、首相が「いいね」と言ったなどと記した愛媛県の文書が公になった。事実なら、一国の首相がこれまでウソをついていたという深刻な問題だ。

 いずれも、衆参両院の予算委員会や党首討論で再三取り上げられたが、解明にはほど遠い。正面から疑問に答えようとしない首相らの不誠実な姿勢こそが、政策論争に割くべき貴重な時間を空費させた。

 ■抑制と均衡再構築を

 森友問題で国会は、財務省からウソの答弁と改ざん後の文書の提出を受けた。本来なら、与野党の区別なく、立法府一体となって、行政府をたださねばならないというのに、与党がその責任を果たしたとは言い難い。

 与党より政府、とくに首相官邸が力を握っているさまを「政高党低」というが、今の政治状況は、与党だけでなく、国会が丸ごと内閣の下請け機関化しているかのような異常な様相だ。

 安倍1強政治が続くなか、憲法が定める立法・行政・司法の三権分立の基本原理が脅かされている。

 衆院選に小選挙区比例代表並立制を導入した90年代の政治改革や橋本内閣での中央省庁再編などを経て、首相の権限が強化されたことが、1強を支えているのは間違いない。

 この間、それに見合うだけの立法府の改革は進まなかった。一方、参院で与野党が逆転する「ねじれ国会」になると、途端に政府の政策遂行に支障を来す現実もあらわになった。

 今こそ、行政府をチェックする国会の機能強化と、行政府と立法府の間のルールの整備が必要だろう。

 国会最終盤になって、現状に対する危機感からか、国会改革の提案が相次いだ。

 超党派の議員でつくる「『平成のうちに』衆議院改革実現会議」は、党首討論の定例化などを柱とする提言をまとめた。

 立憲民主党は、原発ゼロ基本法案など野党提出法案がほとんど放置されたことを踏まえ、議員提出法案を質疑する定例日を設ける審議活性化策などを打ち出した。

 合意できるものは、速やかに実施に移すべきだ。と同時に、行政府と立法府のチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)を再構築するための本格的な論議を与野党に求めたい。

 ■問われる自民総裁選

 通常国会が終わり、9月の自民党総裁選に向けた動きが本格化する。3選を目指す首相は、当面は西日本豪雨などの災害対応を優先し、8月後半に立候補を表明する見通しだ。

 党員・党友による地方票の行方ははっきりしないが、有力派閥の支持をとりつけ、国会議員票の半数以上を固めたとされる「安倍優位」の見方が党内では専らだという。

 驚くのは、首相の3選を前提に、ポストをめぐる皮算用が早くも聞こえてくることだ。首相ら政権中枢の顔色ばかりをうかがう空気が、森友・加計問題で取りざたされる忖度(そんたく)政治の温床になっているのではないか。

 前回3年前の総裁選で、立候補を模索した野田聖子氏は20人の推薦人を集められず断念した。無投票での再選が1強に拍車をかけた。

 次の総裁任期は21年まで。天皇の代替わりや東京五輪を控える。内政・外交とも課題は山積みで、国会審議も含め、政治の闊達(かったつ)な議論が欠かせない。

 多様な価値観をぶつけ合える政治の多元性を取り戻すことができるか。自民党の総裁選でそれが問われる。

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