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 欧州の寄り合い所帯から独り抜けする。そのゴールだけは決まっていても、その後の欧州とのつきあい方が描けない。

 そんな英国の悩みが深まっている。欧州連合(EU)からの離脱が来年3月に迫るなかで、国内外の交渉が収まらない。

 メイ首相は今月、初の「離脱白書」を発表した。EUから完全に抜け出る強硬路線を改め、通商などで共通の枠組みにとどまる穏健路線に転換した。

 しかし、実現の見通しは明るくない。足元の与党・保守党内からも、そしてEUからも批判が続出している。

 離脱を決めた国民投票から2年たち、交渉の実質期限とされるEU首脳会議は今年10月にある。メイ首相は「悪い取引をするくらいなら、取引なしの方がいい」と語り、EUとの合意ができないままでの離脱も辞さない構えもみせている。

 そうした発言は譲歩を引き出すための戦術かもしれないが、事態の重さを見失わないでもらいたい。時間切れで英国でのEU法が失効し、世界経済や国境管理が大混乱に陥る――そんな無秩序な離脱は何としても避けなくてはいけない。

 白書では、英・EU間で自由貿易圏をつくり、モノの取引に限って共通ルールを維持することを表明した。実質的に関税同盟に残ることに近い。

 一方で人の移動については、EUのルール適用を「終了する」という。就業や留学などでの入国には新たな規定をつくるとしている。

 単一市場の恩恵は受けるが、移民などは独自に制限する。そんな離脱ならば、まさに「いいとこ取り」だ。EUにとって、域内の人、モノ、資本、サービスの自由移動は大原則であり、「モノ」だけ切り離した自由移動はあり得ない。

 EUがこの要求を受け入れれば、移民排斥を掲げる政党が支持を広げる欧州で、他の国も離脱に走るおそれがある。1950年代から続く欧州統合の流れに打撃となろう。

 統合の理念を守るためにも、公正で持続可能な英国とEUとの新たな関係を周到に描きだす必要がある。冷静で建設的な協議を急がねばならない。

 英国内では、離脱強硬派と親EU派の対立が激化し、双方が政権に圧力をかけている。両派の閣僚らが辞任し、メイ首相は綱渡りの政権運営が続く。

 英国の未来だけでなく、国際経済と秩序全体に大きな影響を及ぼすプロセスでもある。自国第一主義に陥らない大局的な判断を、英国政界に望む。

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