[PR]

 貿易摩擦の高まりで、世界経済は下振れするリスクが増大している。

 主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が共同声明でそう指摘した。

 このまま報復の応酬が続けば、世界経済の危機につながりかねないという認識を、G20が共有したことの意味は重い。その一員である米国は、混乱の元となっている自らの振る舞いの罪深さを自覚するべきだ。

 だが、G20は懸念は共有したものの、具体的な打開策を打ち出せたわけではない。

 米国が安全保障を理由に、鉄鋼とアルミニウムに輸入制限をかけると決めた直後の3月の前回会合でも、「保護主義と闘う」とした昨年7月のG20首脳会議(サミット)での合意を声明で「再確認」した。「さらなる対話や行動の必要性がある」との文言も盛り込まれた。

 ところが、米国は国際合意などおかまいなしだ。輸入制限を予定通りに発動し、中国や欧州連合(EU)などが報復関税で対抗する事態となった。中国には知的財産の侵害を理由にした制裁関税も発動し、中国が報復している。自動車などの関税の大幅引き上げも検討しており、状況は悪化する一方だ。

 今回の声明では「対話や行動を強化する」と、前回より表現を強めた。危機感の表れであろう。しかし声明で一致しても、米国と他国の溝が埋まったようには見えない。

 ムニューシン米財務長官は会合後の会見で「米国や保護主義のことばかりが話題になったように見られるが、そんなことはない」と主張。米国は最も巨大な自由市場国であり、各国に関税や補助金をゼロにして自由貿易を深めていくよう要請したと述べた。

 トランプ米大統領の保護主義に対する懸念の声は、国際社会だけでなく、米国内からも次々にわき起こっている。

 中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は米上院での証言で、「長期に高関税がかけられれば、米国にも他国にも悪影響をもたらす」と警告した。自動車などへの高関税について米商務省が開いた公聴会では、「関税は米国を傷つける」「米経済や国家の安全保障を弱める」といった意見が噴出した。

 トランプ氏は25日、EUのユンケル欧州委員長と会談し、通商問題を協議する。G20の国々、そして米国内から聞こえる懸念の声に耳を傾ければ、何を話し、何をなすべきか、答えは明らかだ。

こんなニュースも