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 自民党の岸田文雄政調会長が9月の総裁選に立候補せず、安倍首相の3選を支持する考えを表明した。

 首相は既に、自らの出身派閥の細田派に加え、麻生、二階派の支持を得ている。第4派閥の岸田派を加えれば、党所属国会議員の6割に達する。

 5年7カ月に及ぶ長期政権の下、我も我もと「安倍1強」に付き従う姿は、闊達(かったつ)な論争が失われた党の姿を映し出す。

 「安倍総理と私は、政治理念とか、政策についても異なる部分がある」

 岸田氏は記者会見でそう語った。ならば総裁選に出て、堂々と議論すべきだった。お互いの政策を鍛え、党内外の理解も深める機会となったはずだ。

 安倍政権で4年半にわたって外相を務めた岸田氏は、昨夏から閣外に出て「ポスト安倍」候補と見られてきた。今春には派閥としての政策骨子を発表し、「トップダウンからボトムアップへ」「多様性を尊重する社会へ」など、首相との違いを強調していた。

 だが結局のところ、不出馬の決断で1強政治の継続を肯定したことになる。

 背景には人事での処遇をちらつかせる党内の権力闘争があるのだろう。安倍氏を支える麻生副総理兼財務相は先月、「(総裁選で)負けた時には冷遇される覚悟をもたねばならない」と揺さぶりをかけた。

 こんな発言がまかり通ること自体、1強のおごりを示しているというほかない。

 従う者は厚遇され、意に沿わないものは冷や飯を食う。森友・加計問題で、行政の公正性と政治への信頼を損なった忖度(そんたく)の構造が、官僚だけでなく、選挙で選ばれた国民の代表たる国会議員の間にも根を広げているのは憂うべきことだ。

 衆参両院で過半数を占める自民党の総裁選は、事実上の首相選びである。

 首相が3選されれば、戦前、戦後を通じて在任期間が最長となる可能性も出てくる。強引な国会運営にしろ、政権をめぐる疑惑の放置にしろ、1強政治の弊害が誰の目にも明らかな今、総裁選で示される自民党の選択は極めて重い。

 党内では石破茂元幹事長らが出馬の意向をみせており、前回2015年のような無投票にはならない見通しだ。どこまで政策論争が深まるか、党員・党友による地方票の行方とともに注視したい。

 1強の裏に広がるのは、活力なき政治だ。一人の権力者になびくだけの現状は危うい。

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