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 国民の信頼を失った組織を、刷新するつもりはないのではないか。そう判断せざるをえない人事だ。

 前任者がセクハラ問題で辞任し、3カ月の空席が続いていた財務省の新しい事務次官に、岡本薫明(しげあき)氏が任命された。主計局長からの昇格である。

 森友学園との国有地取引について、昨年の通常国会で、当時理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏はうその答弁を重ねた。その答弁に合わせるように、財務省では公文書が破棄され、改ざんされた。当時、官房長として文書管理や国会対応の責任者だったのが岡本氏だ。

 麻生財務相はきのうの会見で、「一連の問題を真摯(しんし)に反省し、信頼回復に向けて再生に取り組むのにふさわしい人材を配置した」と強調したが、額面通りには受け取れない。

 官房長、主計局長といった要職を歴任した岡本氏は、もともと省内で次期次官の本命と見られていた。文書改ざん問題で文書厳重注意の処分を受け、麻生氏と安倍官邸は一時、別の人事を検討したとされる。

 結局、本命の起用に至ったのは、内閣支持率なども見ながら、「森友問題に対する批判はやり過ごせた」とみたからではないか。

 昨年、国会答弁で批判を浴びた佐川氏は「適材適所」として、国税庁長官に任命された。やはり入省年次といった役所の論理に基づく人事だった。

 その佐川氏は今年3月、森友問題の対応を問われ、引責辞任している。麻生氏も官邸も、失敗から何を学んだのだろう。

 20年前、財務省の前身の大蔵省で接待汚職事件が起きたときは、大臣や事務次官は辞任し、官房長は降格になった。

 いまはどうか。国民を代表する国会を欺いても、本来辞めるべき責任者の麻生氏は財務相の職にとどまったまま。注意を受けた幹部も昇格する。投げかけられた問題の深刻さを、理解していないとしか思えない。

 人口減に直面する日本は財政赤字を抱え、課題は山積している。来年の消費税の増税後も、「負担の分配」を考えなければならない。

 それにはまず、財務省が国民の信頼を取り戻す必要がある。

 岡本氏は「処分を受けた者の昇格に厳しい批判があることは、真摯に受け止めないといけない」と語った。民間の有識者も交え、秋には再生に向けた課題をまとめて示すという。

 本当に組織を刷新できるのか。国民の疑念を消すには、成果を示すしかない。

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