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 同じ民族が3年余り戦火を交わした朝鮮戦争は、公式には今も終わっていない。65年前の7月、休戦の協定が結ばれた時、終戦の道がこれほど長く遠いと誰が想像しただろう。

 この膠着(こうちゃく)を変える節目として期待されたのが、6月の初の米朝首脳会談だった。あれから1カ月半をすぎたが、朝鮮半島の平和体制や非核化への道筋はなお見えていない。

 しかし会談前後に生まれた、かつてない首脳対話の機運はまだ消えてはいない。金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長が中国、韓国、米国の首脳と相次いで対面した過程は、北朝鮮が「普通の国」をめざす兆しにも見えた。

 65年間も凝結した氷を溶かすには、金委員長のさらなる決断が必要だ。北朝鮮国民のためにも東アジアの平和のためにも、指導者の顔の見える北朝鮮外交を広げていくべきだ。

 これから9月に向け、多国間外交の季節がやってくる。8月のシンガポールでの東南アジア諸国連合(ASEAN)の会合、9月のロシアでの東方経済フォーラム、そして米ニューヨークでの国連総会と続く。

 これらの機会に北朝鮮がどう向きあい、まっとうな対話に臨むか国際社会は注目している。とくに国連総会では世界の首脳級が一堂に会す。金委員長はこの場に参加し、閉鎖的な国からの脱皮を行動で示すべきだ。

 朝鮮半島の分断を固定化させたのは冷戦構造だったが、北朝鮮をとりまく現状は冷戦後に自ら招いた側面が大きい。内にこもったまま身勝手な行動を重ね、困窮を招いた。

 金委員長はいま、社会主義の看板は掲げつつ市場経済を導入し、経済の立て直しを急ぐ構えだ。外遊でも夫人や妹を伴い、自身の肉声や表情を見せる場面も増えた。

 「普通の国」をめざそうというのならば、国際会議への出席を臆する理由はあるまい。そして米朝対話を進展させる健全な姿勢を示してもらいたい。

 北朝鮮は約束どおり、ミサイル施設の解体を始めたほか、休戦協定65年を迎えた27日には、当時の行方不明米兵らの遺骨を米側に引き渡した。

 それは対話をつなぐジェスチャーではあるが、体制の保証につながる証しを先に見せよとの主張は変わらない。トランプ米政権の出方も依然不透明だ。

 だからこそ多国間外交の重みが増す。日本やロシアも金委員長との対話を探り、変化を促す努力が必要だ。朝鮮半島の和平をもたらす覚悟は、日本はじめ周辺各国に求められている。

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