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 カンボジアの民主主義が、いよいよ危うい淵に立っている。日本を含む国際社会は、フン・セン政権に自制を促すよう働きかけを強めねばならない。

 おととい投開票された下院の総選挙で、与党・人民党の圧勝が確実視されている。与党関係者によれば、全125議席を人民党が独占する可能性すらあるという。

 前回2013年の総選挙では最大野党の救国党が4割以上の議席を得ていた。それが今回、ここまで与党の圧倒的な勝利に転じたのは、公正な民意ではなく、弾圧による結果だ。

 フン・セン政権は選挙に備えて、政権転覆を謀ったとして救国党党首を逮捕した。さらに最高裁は党の解散を命じた。こうした措置により、市民の政権批判は封じこまれた。

 内戦終結後の1993年に国連が実施した総選挙から数えて6回目。今回の異常な選挙は、国際社会が支援してきた民主化を大きく後退させるものだ。この選挙結果と、それによる政権の正統性を認めるわけにはいかない。

 欧米は選挙の環境が不当だとして選挙支援をやめた。欧米も日本も選挙監視団を送らず、毎回監視をしてきた国内団体も手を引いた。投票率は前回を大きく上回ったが、無効票や白票も相当含まれる可能性がある。

 今年2月の上院選でも人民党が議席を独占した。33年間首相の座にあるフン・セン氏は、政権の世襲も視野に入れているとされる。政治の強権化が今後ますます進む恐れがある。

 米国政府は「自由でも公正でもなく、国民の意思を表していない」との声明を出した。欧米からの指弾に対してフン・セン氏が強気でいられるのは、南シナ海問題などでカンボジアを味方につけたい中国が手厚く支援しているからだ。

 カンボジア和平への参画は、日本外交が90年代に踏み出した大きな一歩だった。今も、この国の民主主義の発展に貢献するのは日本の責任でもある。

 ところが日本政府は中国を意識して、フン・セン政権への批判的な姿勢を控えがちだった。今回も投票箱の寄贈などの選挙支援を続けたため、カンボジアの市民団体から批判された。

 東南アジアでは他にも軍事政権が続くタイや、強引な麻薬撲滅作戦を進めるフィリピンなどで民主主義が後退している。

 アジアの隣国として見過ごすわけにはいかない。カンボジア政治に対して厳しい態度が取れるかどうか、日本政府の姿勢も問われている。

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