(自由研究のヒント:下)生きもの「なぜ?」が出発点=訂正・おわびあり

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 家族旅行や遠足で訪れる動物園や水族館。生きものを通じて自然を学ぶ場にもなり、「自然への扉」とも呼ばれる。時間のある夏休みだからこそ、生きものとじっくり向き合ってみよう。観察から生まれる「なぜ?」を大切にすれば、小学生でも大発見ができるかもしれません。(川原千夏子、小林舞子)

 ■天候や時間帯で変わる行動、観察 動物園

 動物園で自由研究のヒントは無いかと、よこはま動物園ズーラシア横浜市)を訪ねた。迎えてくれたのは園長の村田浩一さん。「動物園学」が専門の研究者でもある。

 7月の平日の夕方、小雨が降るなか村田さんと100種超の動物がいる園内を歩いた。「雨の日は動物たちの面白い姿に出合えます」と村田さん。雨が好きで動き回る動物もいれば、ぬれるのがいやで雨宿りするものもいる。夕暮れ時だからなのか、いろんな鳴き声が聞こえてきた。

 インドゾウが飼育係からホースで水をかけてもらっていた。長い鼻を持ち上げ、口で水を受けたかと思うと、鼻先をホースへ向けた。鼻に水が入っても痛くないのだろうか。鼻に入れた水は背中にシャワーのようにかけた。土をかぶっていた時には分からなかったが、鼻の上部の皮膚は鮮やかなオレンジ色だ。

 ゾウは水浴びを終えると、飼育舎の壁に体をこすりつけ、さらに寝っ転がって土をつけた。人間目線では「せっかくきれいになったのに」と思ってしまうが、ゾウにとって土は直射日光や病害虫から皮膚を守る効果があり、水浴びは土をつけやすくする役割があるという。

 ケージでは、ボウシテナガザルがうんていで遊ぶように天井や壁を跳びまわっていた。腕の長さに対して短い脚。何ともアンバランスだ。手をよく見ると3本の指を引っかけて柵を握っていた。体の特徴をサルの仲間で比べたら面白そうだ。

 「5分立ち止まるだけで、面白い行動が見られます。子どもが動物を見て、驚く気持ちを大切にして下さい」と村田さん。

 自由研究につなげるには、その驚きを元にじっくりと観察することが大切だ。例えば、体の模様や毛の生え方、手足の構造、歩き方や食べ方などのしぐさを、種別ごとに比べてみたり、同じ動物でも天候や時間帯によって見比べたりすると「研究」の幅が広がる。なぜそのような行動をするのか、なぜそんな特徴があるのか、野生の暮らしでどういう意味があるのかを探ると面白そうだ。

 「なぜだろう」と疑問を持つ感性が研究の出発点になる。村田さんは「大切なのは通説や俗説を信じすぎないこと。正解が出なくても、自分なりの説を導き出せればよいですね」とアドバイスする。

 ■体の形や暮らしぶり、考え比べて 水族館

 暑い時は、館内で観察できる水族館も楽しい。東京都江戸川区葛西臨海水族園を訪ねた。

 教育普及係の堀田桃子さんは「自由研究ではぜひ『形』に注目して欲しい」と話す。どんな魚も基本的には同じ種類のひれを持つが、その形や大きさ、付いている位置は実に様々だ。体長や目、口、歯の大きさも違う。

 対象の魚は、事前に図鑑などで決めて行ってもいいし、水族館で気に入った魚に決めてもいい。ただ、堀田さんは「事前に詳しく調べ過ぎない方がいい」と言う。観察する前に「答え」が分かってしまうからだ。

 葛西臨海水族園の深さ最大7メートルの大水槽には、約110匹のクロマグロがいる。クロマグロには、使わないときは隠している「秘密」のひれがあるのだという。数分間凝視していると、一瞬、二つのひれを出したのが分かった。

 この二つのひれを出すのは、泳ぐ速度に関係しているらしい。最高時速は80キロ。だが水槽の横を並んで歩けば普段はゆっくり泳ぐことが分かる。「魚の形はすんでいる環境や暮らしぶり、餌の食べ方などに関係している。それらと形を関連づけて考えましょう」と堀田さん。体を横からだけでなく、正面から見ると厚みや目の付き方も分かる。離れて眺めると、群れでの暮らしを想像できる。

 すしネタとして人気が高いクロマグロのように身近で想像しやすい魚の場合は、事前に絵を描いてみてもいい。「実物と比べてみると形が結構違って、面白いですよ」

 次はハタの仲間の巨大魚タマカイの水槽に向かった。クロマグロとはひれの形も動かし方も全然違った。また、「これがひれ?」と驚かされる魚もいる。干潟にすむトビハゼだ。繁殖期にあたる夏は動きも活発。陸上で跳びはねたりじゃれあったりするのに、ひれが活躍する。

 体がなぜこんな形になったか考え、比べることで、理解が深まったり新たな疑問が生まれたりする。堀田さんは「こうしたプロセスを経験することが大事です。親も面白がって一緒に『なぜ』と考えてあげてほしい」と話す。

 ■施設の取り組みも参考に

 多くの動物園、水族館で、生きものが本来生息する環境を取り入れた飼育を目指している。「環境エンリッチメント」と呼ばれる考え方で、例えば、餌やりではわざと隠して臭いを頼りに探させたり、身を隠せる場所を作ったりと、様々な取り組みがされている。

 こうした取り組みを解説した掲示板が設置されていることもあり、自由研究をまとめる時の参考になる。

 真夏の日中だと動物たちは寝ていて、がっかりすることもある。しかし、寝床の環境や手足の折りたたみ方などの寝姿も、観察の大きなポイントだ。夜行性の生きものの姿を見る機会になればと、夜まで開園している動物園や水族館もある。

 ■生きもの観察のポイント

 【事前の準備】

 ◇調べていこう

 ・見たい生きものはいる?

 ・資料室や情報コーナーはあるか?

 ・飼育員さんの解説タイムは?

 ◇お役立ちサイト

 ・日本動物園水族館協会(加盟する151園館のリンク)

  http://www.jaza.jp/index.html別ウインドウで開きます

 ・市民ZOOネットワーク(工夫ある飼育例を調べる)

  http://www.zoo-net.org/db/別ウインドウで開きます

 【いざ出発】

 ◇観察に便利な持ち物

 ・双眼鏡

 ・デジタルカメラ

 ・スケッチブック

 ・虫眼鏡

 ・ストップウォッチ

 ◇こんなタイミングに注目

 ・餌やりの時間

 ・夜間公開(夏季に設ける園が多い)

 ・開園すぐ

 <訂正して、おわびします>

 ▼2日付科学面「自由研究のヒント(下) 生きもの『なぜ?』が出発点」の記事で、ボウシテナガザルの特徴を「腕の長さに対して短い脚。長い尾っぽ」としましたが、「長い尾っぽ」を削除します。ボウシテナガザルの尾は痕跡程度で、ほとんど見えません。筆者が別の種類のサルの特徴と混同して間違えました。