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 すぐ着けると見えを切って走り始めたが、目的地は一向に見えてこない。長時間、全力で走ると身体が持たないので、ときにはスピードを緩めます。

 日本銀行が今週決めた金融政策の修正は、おおむねこんな内容といっていい。一見もっともらしいが、経緯を振り返ると、疑問ばかりが浮かぶ。

 まず、3年前に達成するはずだった「2%」の物価上昇率目標は、今から2年後の20年度でも手が届きそうにないという。

 地に足をつけた見通しにしたのは結構だ。賃上げの遅れや、企業や家計の値上げへの抵抗感など、一応の理由も示した。

 だが、今後については、煎じ詰めれば「時間はかかるが、いずれ達成する」という以上の説明はない。この政策をいつまで続けるのか、本当に目標は達成できるのか。多くの国民が抱く疑念に答えていない。

 その一方で、強力な金融緩和を続ける姿勢を強調するため、「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」との文言を声明に盛り込んだ。

 方針の事前表明は、人々の見通しに働きかける手法の一つだが、「当分の間」というあいまいな表現は、混乱の種になる。

 今回の決定で、すぐにも具体的な変化につながるのは、長期金利操作と上場投資信託(ETF)買い入れの弾力化だ。いずれも、「異次元緩和」の副作用を減らす狙いがある。

 長期金利は、誘導目標のまわりで変動を許す範囲を、従来の倍にするという。足元の市場動向をみれば、わずかとはいえ金利上昇を容認するのに等しい。

 長期金利操作の副作用としては、値動きがなくなることで国債市場が凍り付くことや、金利低下で金融機関が経営難になることなどが挙げられてきた。今回の弾力化の目的と根拠は何なのか。説明が不足している。

 ETFは、買い入れ額を弾力化し、より幅広い銘柄からなるTOPIXを主体にする。妥当な判断だが、なぜ現時点までそうしていなかったのか、という反省はないのだろうか。

 この間、日銀は何度か政策を修正してきた。一定の試行錯誤や局面に応じた調整は、必要なことだ。だが、その場合は、従前の施策のどこに問題があったのか、謙虚に振り返り、説明を尽くす必要がある。

 実際には方針転換をしながら、自分たちは常に正しかったという「無謬(むびゅう)性」にこだわる。そのあまり、政策は屋上屋を架した迷宮と化し、不透明さが増していく。それでは目的地も遠のくばかりだ。

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