「狂った果実」の青年の純真から「ひとひらの雪」の中年の色気まで、幅広い人間のありようを表現してきた俳優の津川雅彦さんが78歳で亡くなった。2016年の東京国際映画祭で上映され、今年10月に一般公開される「鳩 Pigeon」の主役に津川さんを起用した行定勲監督が、現場での思い出などを踏まえて、名優を追悼する。

 「マルサの女」などの伊丹映画での理知的なのにパワフルで、人を食ったような癖のある人間臭さで観客を巻き込む、津川雅彦さんの凄(すご)みのある演技が好きだった。特に記憶に残っているのは故緒形拳さんとの壮絶な競演作「破獄」というテレビドラマだった。津川さん演じる刑務官の沈黙する眼差(まなざ)しで人間の恩愛を感じさせる演技が素晴らしかった。

 一昨年の3月、灼熱(しゃくねつ)の太陽がジリジリと照りつけるマレーシア・ペナン島で私は津川さんを撮っていた。南国で余生を過ごすために息子に移住させられた孤独な老人。信じているのは飼っている鳩(はと)だけ。津川さんはこの老人の淋(さび)しさには自分の本来の明るさが邪魔だと思い、スタッフや共演者とコミュニケーションを絶った。

 陽炎(かげろう)の中に立つ痩…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。

2種類有料会員記事会員記事の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら