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 自民党の石破茂・元幹事長がきのう、9月の総裁選への立候補を表明した。3選をめざす安倍首相も近く態度を明らかにする。3年前は首相が無投票で再選しており、6年ぶりの投票となるのが確実となった。

 石破氏は、党三役や閣僚を歴任した論客だ。具体的で実のある論戦を期待する。

 結党から63年になる自民党の歴史でも、現職の総裁に対抗馬が立ったことはそう多くない。

 94年に自社さ連立で政権に復帰して以降では、小渕首相に加藤紘一、山崎拓の両氏が挑んだ99年と、小泉首相と亀井静香、藤井孝男、高村正彦の3氏が争った2003年の2例だけだ。

 加藤氏らは、小渕氏が進めた自自公の連立路線に異議を申し立てた。亀井氏らは、「抵抗勢力との対決」を演出して官邸主導を強める小泉氏の政治手法に修正を迫った。いずれも首相が勝利したが、対立軸は明確で、挑戦者の舌鋒(ぜっぽう)も鋭かった。

 今回、石破氏が掲げたキャッチフレーズは「正直、公正」だ。森友・加計問題で、行政の公平・公正に対する信頼が失墜し、野党の質問に正面から答えようとしない首相の不誠実な対応に批判が集中したことが念頭にあるのは間違いない。

 きのうの立候補会見では「政治・行政の信頼回復100日プラン」の実行を掲げた。期限を切って、強引な国会運営を見直し、官邸主導のあり方も見直す考えを強調した。

 石破氏は安倍政権の現状に対する直接的な批判は控えていたが、問おうとしているのはまさに、安倍1強政治の弊害そのものだろう。ならば、首相の政治手法のどこに問題があり、どう改めていくのか、具体的に示し、論戦に挑む責任がある。

 党内では、7派閥のうち5派閥が、すでに首相の3選支持を決めた。総裁選後の党役員・閣僚人事を見据え、こぞって首相にすり寄る姿は、1強の下、活力を失った党の現状を物語る。

 そんな中で注目されるのが、今回から国会議員票と同等の重みを持つことになった、全国の党員・党友による地方票の行方だ。01年の総裁選では、地方票で小泉氏が圧勝することが分かり、国会議員の判断に大きな影響を与えた。

 与党第1党のトップ選びは、それまでの政権運営を検証し、広く国民の前で今後の方向性を議論する格好の機会である。

 党は討論会の充実を図る。候補者は真摯(しんし)に政見を闘わせる。実質的な首相選びにふさわしい論戦にできなければ、政治の信頼回復にはつながらない。

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