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 40年以上も武力紛争が続くフィリピン南部ミンダナオ島で、恒久的な和平に向けた歩みが始まった。日本を含む国際社会は、流れが後戻りしないよう支援していきたい。

 首都マニラで今月、「バンサモロ基本法」の成立式典が開かれた。ミンダナオ島南西部などのバンサモロ地域に、高度な自治を認める取り決めである。

 フィリピンはキリスト教国だが、南部地域はイスラム教徒も多い。そのためかねて、独立運動などによる摩擦が続いた。

 基本法により、地域のイスラム教徒住民が2022年に選挙で代表を選び、自治政府をつくる。天然資源の権利や、徴税、予算など広い権限をもつ。

 長年の対立を解きほぐすための基礎となるプロセスだ。ドゥテルテ大統領は少数派の権利を重んじ、自治を根づかせる丁寧な目配りを続けてほしい。

 自治の合意は、この地域を代表する最大の武装組織「モロ・イスラム解放戦線」と政府との間で結ばれた。両者は4年前に包括和平の約束を交わしたが、その後に衝突が再燃し、基本法は成立しないままだった。

 ドゥテルテ氏はミンダナオ島の出身であることが強みだ。議会の上下両院に粘り強く働きかけ、基本法をまとめあげた。

 強引な麻薬取り締まりなど人権軽視も指摘される大統領だが、この和平努力については国連事務総長も「歴史的な成果」と歓迎する声明を出した。

 ただ今後の課題は多い。武装解除する兵士に職を提供できるか。住民が今後、経済発展を実感できるか。ほかの武装組織が自治に反発する恐れもある。

 和平合意した組織の分派は、中東の過激派組織「イスラム国」(IS)に通じる勢力も合流し、昨年武装蜂起して拠点作りを企てた。ISなど過激派は各地の宗教対立を利用し、テロ活動を広げようとしている。

 地元に根ざしたイスラム教徒による安定した自治が実現すれば、ISなどが拡散を狙う過激思想への防波堤にもなろう。

 日本にはすでに仲介の実績がある。11年、当時のアキノ大統領と武装組織の秘密会談を設定し、和平に道筋をつけた。

 国際停戦監視団にも専門家を派遣し、経済開発や復興援助は15年ほど前から続けてきた。国際協力機構(JICA)は、武器を手放した兵士への農業技術研修なども手がけてきた。

 政府とだけでなく、武装組織とも信頼関係を築いてきた意義は大きい。経験を糧に適切な支援を続け、日本のアジア外交における財産にしたい。

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