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 過労死をなくすための施策の土台となる国の過労死防止大綱が3年ぶりに改定され、長時間労働が多いなどとして特別に調査する業種に「メディア」が追加された。NHK記者の過労死が労災認定されたことなどが背景にある。報道各社は、早く正確な情報を伝える報道機関の役割と、記者の健康確保の両立に向けて取り組みを進めている。

 ■NHK、一部の宿直廃止 記者の負担分散

 先月7日土曜の午後9時前、千葉県で震度5弱を観測した地震を伝えたNHKの臨時ニュースが、ツイッターなどで話題になった。千葉放送局のスタジオに画面が切り替わると、Tシャツ姿の男性ディレクターが登場。「地震発生当時、千葉局にはディレクターの私1人しかいませんでした」と話し始めたからだ。

 NHKは「取材や夜間の態勢についてはお答えしていない」とするが、複数の関係者は「働き方改革の結果だ」と解説する。千葉、神奈川、埼玉などの放送局で記者の泊まり勤務を廃止したという。

 2014年に女性記者(当時31)の過労死が労災認定されたことなどから、「ここ数年で局内の雰囲気は劇的に変わった」と30代の男性記者は言う。「迅速な報道には泊まり勤務が必要なはずだが、それでも地方では一部廃止した。上層部の意思の強さを感じた」。複数の記者が「週休2日が徹底されつつある」と話す。だが「求められる成果は変わらないのでつらい面もある」との声もある。

 TBSでは昨年度、報道局の一般職員の平均労働時間が前年度より8・7%減った。休日出勤をしたら1週間以内に代休をとる▽入社1年目の社員には週1日、残業ゼロの日を設ける▽部署を越えた連携で泊まり勤務の人数を削減する――などしているためだ。

 共同通信社は今年から、社会部の記者が災害や事件に即応するために当番制で担当する宿直勤務の回数を減らすため、これまで宿直がなかった他部の記者をローテーションに加えた。また、宿直明けの記者は午前10時帰宅を徹底。帰っても仕事が回るよう、一部の職場は複数の記者をグループ化してカバーし合っている。同社総務局は「定時帰宅率は向上した」とする。

 日本経済新聞社は、20年にも記者を「完全週休2日制」にするとホームページで表明。また記者が関係者宅を訪れる「夜回り」の取材などで深夜まで仕事をした場合は、翌朝の出勤を遅くして、休息時間を確保する取り組みも始めているという。

 ■朝日新聞社の取り組みは

 朝日新聞社は2014年から、裁量労働制を記者などに導入した。実際に働いた時間に関わらず、一定時間働いたとみなして残業代込みの賃金を払う制度で、ほかの報道機関にも導入例がある。記者の仕事は進め方を本人に大きく委ねる必要があり、労働時間を会社が厳密に管理するのは現実的ではないと判断した。

 一方で、働き過ぎを助長するとの懸念も強い。そのため労働時間のかわりに、出勤と退勤の時間を自己申告で記録し、その「出退勤時間」が一定の基準を超えたら医師の面接を受けることを義務づけるといった健康確保の仕組みを設けている。

 本社は17年から「働き方改革」を経営の最重要課題と位置づけ、今春には20年度までに全職場で公休取得率100%、1人あたりの年間勤務時間10%削減などの目標を作って、意識改革と仕事の見直しに取り組んでいる。

 職場ごとに見直すべき業務を挙げるなどの取り組みも進めつつある。事件・事故や災害などの取材を担う東京社会部では16年から、部員約120人のうち主に本社に詰める約45人の記者を対象に、2グループに分けて毎週交互に「ノー残業デー」を実施している。

 対象者は限られる上、災害や事件が起きれば仕事を続けるケースも多いが、社会部に通算約5年在籍する記者(40)は「以前は何となく会社に残ることが多かったが、今は仕事がなければ早く帰るという意識が定着してきた」と話す。

 大阪社会部では昨年3月から、宿直明けの記者はそのまま1日休みをとるか、十分な休息時間をとることを原則とした。しかし、取材が重なったり、災害などが起きたりすると、休みを十分に取れないことがある。7月に西日本を襲った豪雨災害のときは、朝から勤務していた記者が夜にそのまま現地に向かうこともあった。その分、長期の夏休み取得を呼びかけるなどして試行錯誤を続けている。

 <中村史郎ゼネラルマネジャー兼東京編集局長の話> 過労死防止大綱の対象業種にメディアが加えられたことを重く受け止めています。本社ではこれまでに過労死として労災認定された事案はありませんが、十分な対応ができているとは言えず、様々な試行をしています。今後も働き方改革問題を手厚く報じるとともに、自らの働き方にも厳しく向き合っていきます。

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 Media Times(メディアタイムズ)

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