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 警察署に留置中の容疑者が逃げ出すという、あってはならない事件が起きた。警察全体が基本に立ち返り、同様の緩みがないか点検を急がねばならない。

 強制性交や強盗致傷などの疑いで逮捕され、大阪府警富田林署に留め置かれていた男が12日夜、弁護士との面会を終えた後に逃走した。容疑者と面会者とを隔てるアクリル板を蹴破り、すき間から逃げたとみられる。署内には約20人の警察官がいたが、誰も気づかなかった。

 警察は、信じられない失態をいくつも重ねた。

 面会室のドアは開閉時にブザーが鳴る仕組みになっていた。だが同署は、面会を終えた容疑者らがドアをノックして署員に知らせる運用をとり、ブザーを鳴らす電池を抜いていた。先に部屋を出た弁護士も、署員に声をかけることをしなかった。

 アクリル板は金属製の枠にはめられていたが、署が建った約30年前から交換や補修は一度もなかった。月1回の点検は目視にとどまり、府警本部による監査でも、ドアブザーとともに対象外とされていた。

 加えて逃走後の対応も、住民の安全を守る警察の任務を放棄したかのようなお粗末さだ。

 面会は午後8時ごろに終わったとみられるが、署員が逃走に気づいたのは9時40分過ぎ。事件の発生を報道機関に連絡したのはそれから約3時間後で、メール配信システムで住民に周知したのは、さらに遅れて13日午前6時半近くだった。

 同署幹部は取材に「可能な限り早い対応をとっており、問題はない」と語ったが、認識の甘さに驚く。逃げた容疑者との関連を警察自身が疑うひったくり事件が、複数起きている。ただちに注意を呼びかけるのが、当然の務めではなかったか。

 身柄拘束されている容疑者や被告にとって、警察官らの立ち会いなしに弁護士と面会して自由に会話し、書類などを受け取ることは、最も重要な基本的権利だ。こうした「接見(秘密)交通権」は確実に保障されなければならない。だがそれと、逃亡を防ぐために万全の措置を講じることとは別の話だ。

 4年前には新潟地裁の勾留質問室から容疑者が逃走する事件があり(約5分後に逮捕)、問題の部屋の窓に格子をはめるなどの防止策がとられた。

 まずは逃げた容疑者の確保に全力をあげなければならない。あわせて、逮捕・勾留されている者を扱うすべての機関は、設備と運用の双方をいま一度確認し、同様の事例が起きないよう態勢を整える必要がある。

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