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 ゲノム編集という新しい手法で品種改良された動植物を、どう取り扱うべきか。政府が法規制の検討を始めた。

 生物多様性や人体に悪影響があっては困る。「安全」を第一に、制度を整えねばならない。

 従来の遺伝子組み換えに比べて、ゲノム編集は格段に精度が高い。人工酵素のハサミでDNAを切り、狙った遺伝子の機能をなくしたり、逆に、めざす場所に新たな遺伝子を組み込んだりすることができる。

 筋肉の量が多いマダイ、おとなしくて養殖しやすいマグロ、傷みにくいトマト、収量の多いイネ……。さまざまなゲノム編集の応用研究が進んでいる。

 利点があるのは確かだが、自然界にないものを野放図に認めるわけにはいかない。

 従来の技術で遺伝子を組み換えた場合は、生物多様性を守る通称カルタヘナ法や、食の安全を担保する食品衛生法によって規制され、国の審査・承認を受けないと世に出せない。

 ところが、ゲノム編集を使って品種改良された場合は、はっきりした定めがない。そこで6月に閣議決定された「統合イノベーション戦略」に、今年度内に法律上の扱いを明確にすることが盛り込まれた。

 環境省が設けた専門家による検討会はきのう、事務局の原案を大筋で了承した。

 新たな遺伝子を組み込んだものはカルタヘナ法の規制対象とし、もともとある遺伝子の機能を失わせただけのものは規制しない――というのが骨子だ。機能喪失は自然界の突然変異でも起きるので問題視する必要はない、との考えに基づく。

 海外の対応はさまざまだ。

 米国のように特段の規制がない国がある一方、欧州連合(EU)司法裁判所は先月下旬、機能喪失も含めて幅広く網をかけるべきだとの判断を示した。

 ゲノム編集は新しい技術なので、思わぬ落とし穴が隠れていることは否定できない。実際に「意図しない変異が生じた」との研究報告もある。ここはEUにならって、メカニズムが完全に解明されなくても予防的に対策をとる「予防原則」に立つことが大切である。

 環境省原案では、規制から外れるものについても遺伝子の特徴や用途などを事前に役所に情報提供するよう求める。問題が起きたときに備え、漏れのない仕組みを工夫するのは当然だ。専門家だけでなく、消費者の声も聞いて決めてもらいたい。

 石橋をたたきながら新しい技術とつきあう。そんな慎重さが求められる。

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