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 英語の民間試験を入試にどう活用するか。各大学の方針がなかなか定まらない。朝日新聞の調べでは、今月上旬の時点で、使うかどうかさえ決めかねている国立大学が37大学と、全体の半分近くに及ぶ。

 民間試験はいまの高校1年が受験する20年度から導入される予定だ。読む・聞く中心だったのを改め、話す力も測るための大きな制度変更で、試験準備にも時間を要する。方針決定が遅れるほど、生徒や教員にかかる負担は大きくなる。

 混迷の原因は、文部科学省が大学や高校現場の懸念に十分こたえないまま、導入を決めた拙速さにある。同省が認定する民間試験は8種あり、出題のねらい、内容、試験方法など、すべて違う。異なる試験を受けて出願してきた生徒らの得点を、同列に並べて公平に比較できるのか。最大の疑念はそこにある。

 文科省は「各種試験のスコアを比べられる対照表がある」との説明を繰り返して見切り発車した。だが理解は得られず、動揺は収まっていない。

 東京大学の学内検討グループは先月、「およそ懸念が払拭(ふっしょく)されたと言うにはほど遠い」と指摘し、民間試験を「使わない」という選択肢も考えるべきだ、と総長に具申した。

 国立大学協会は、全国立大が「活用する」旨を申し合わせている。「使わない」は想定されていないが、入試方法は各校が教育方針に照らして自由に決めるのが筋だ。公平さに確信をもてず、受験生への説明が難しいと考える大学にまで使用を強いるべきではない。

 主に想定される使い方のひとつは、各試験のスコアを何らかの形で換算し、共通テストの得点に加算すること。もうひとつは、一定以上の成績を取るのを出願資格にすることだ。

 後者なら、設定されたハードルさえ越えれば得点差は問題にならないから、どの試験を選んだかで有利不利がわかれる不公平感は軽減されるだろう。

 ただし、東大の検討グループが指摘するとおり、他教科は優秀なのに英語だけ苦手な受験生が、排除されてしまうという難点はある。

 まずは文科省が、先のスコア対照表の信頼性をはじめとする数々の疑問について改めて説明し、対応策を検討することだ。そのうえで、場合によっては導入自体を先送りする。それくらいの覚悟で臨む必要がある。

 日本は入試の公正さを重んじる社会だ。おおかたの納得と合意がないまま強行した場合の不信と混乱は、計り知れない。

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