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 抗菌薬(抗生物質)が効かない「耐性菌」への対処の難しさが改めて浮き彫りになった。

 鹿児島大病院で多剤耐性アシネトバクター(MDRA)による院内感染が起きていたことが、今月明らかになった。類似の耐性菌も含め、計15人の患者から菌が発見された。集中治療室(ICU)を中心に感染が広がった可能性が高いという。

 続いて市立静岡病院でも、MDRAによる院内感染の発表があった。4人の患者から菌が見つかったという。

 MDRAは08年から10年にかけて福岡大病院や帝京大病院で院内感染が起き、厚生労働省が監視を強めてきた。同省の調査によると、検出報告のあった病院は全体の2~3%程度だが、ひとたび感染・拡大すると対応は難儀をきわめる。

 鹿児島大病院では昨年4月に1人の患者からMDRAが見つかった。この時点で院内感染を疑ったが、他の患者や環境からは検出されなかったという。だが半年後に別の患者に菌を確認し、その後も続いた。病院はICUを改修し、きのうから一時閉鎖して消毒に踏みきった。

 アシネトバクターは乾いた環境中でも長期間生き延びる。病院側は、最初の発見後も環境中に菌が残っていた可能性があるとみており、記者会見の席上、「リスク評価を甘くみたかもしれない」との見解を示した。

 市立静岡病院では、転院してきた患者からMDRAが検出され、ただちに個室に移したが、拡大を防げなかった。

 どちらも菌の存在を察知して手立てを講じたのに、結果として万全でなかった。再発防止のために何をすべきか。検証して教訓を導き出し、医療関係者の間で共有することが重要だ。

 残念ながら院内感染を防ぐ秘策はない。日ごろから監視を怠らず、手洗いや器具の消毒の徹底という基本を忠実に実行し、発生リスクを少しでも下げる努力を続けるしかない。

 患者の転院などを通じて耐性菌が病院間を行き来することも多い。中小病院や高齢者施設はともすれば対応が手薄になりがちだ。これらも含めた、情報や感染防止のノウハウを地域で共有するネットワークの役割が、ますます重要になっている。

 耐性菌の広がりは世界的な課題だ。日本も2年前、対策をまとめた計画を定め、耐性菌が検出される割合や、耐性菌が登場した背景にある不要な抗菌薬の使用を減らしていく目標を掲げた。当面終わりの見えない戦いになることを覚悟し、着実に取り組み続ける必要がある。

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