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 朝鮮半島をめぐる各国の対話が続いていることに伴い、北朝鮮の人道に関する問題にも徐々に動きが出てきた。

 日本も、北朝鮮に残る多くの人びとの問題を抱えている。拉致被害者をはじめ、戦後に日本に戻れなくなった残留日本人。そして、80年代半ばまで続いた在日朝鮮人の帰還事業で渡った日本人配偶者もいる。

 日本政府はこの機運を逃すことなく、対話で事態を動かし、進展を待ちわびる人びとの思いにこたえる必要がある。

 南北朝鮮の間では先週、朝鮮戦争などで生き別れた離散家族が再会した。北朝鮮の景勝地・金剛山に数百人が集い、六十余年ぶりの対面にむせび泣いた。

 韓国の歴代政権は人道問題として離散家族の再会を求め続けているが、北朝鮮側は政治交渉の一環として扱ってきた。今回も、平昌五輪以降の融和を受けて約3年ぶりに実現した。

 北朝鮮は米国に対しても、人道問題を政治カードに使う。

 6月の米朝首脳会談の前に、スパイ容疑などで拘束していた米国人3人を解放したほか、先月には朝鮮戦争時の米兵の遺骨の一部を返した。トランプ政権との交渉を穏便に進めたい意図があったのは明らかだ。

 北朝鮮メディアは一昨日夜、やはり拘束中だった1人の日本人観光客を「国外追放する」と伝えた。詳細は不明だが、日本側に向けた何らかのメッセージである可能性は排除できない。

 4年前に日朝両政府が発表した「ストックホルム合意」で北朝鮮側は、拉致被害者や行方不明者問題をはじめ、すべての日本人に関する調査を包括的に実施すると約束した。

 そこには、帰還事業での約1800人とされる日本人配偶者の問題や、1945年前後に北朝鮮域内で亡くなった日本人の遺骨の調査なども含まれる。

 配偶者のうち日本への帰国を望む人びとの一時帰国は、かねて日本政府が求めてきた。2000年までに3回にわたり43人が里帰りし、それっきりだ。

 拉致問題について、北朝鮮に誠意ある対応を求め続けるのは当然だ。同時に、他の人道問題も、日本政府が粘り強く取り組まなければ前進しない。残された時間の少なさに焦りを感じる関係者は数多い。

 核をめぐる米朝交渉の先行きは見通せない。一方、本格的な日朝協議はその兆しすら見えていない。米国や韓国とも調整しつつ、日朝間の対話の可能性を探るべきだ。

 長年にわたり積み重なる人道問題を放置してはならない。

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