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 介護現場で働く人が、サービスを利用する人やその家族から、セクハラやパワハラを受けている。指摘されていながら、あまり表面化しなかったこの実態を、国が初めて調査する。

 被害の防止策や被害に遭った場合の対応を、来年3月までにマニュアルにまとめるという。介護保険の運営主体である市町村と連携しながら、各現場での環境改善を急ぎたい。

 国に先立ち、労働組合の日本介護クラフトユニオンが状況を調べた。回答した約2400人のうち74%がなんらかのハラスメントを受け、うち94%がパワハラを、40%はセクハラを経験していた。

 66ページにわたる「ハラスメントの具体的内容」は、読み進めるのもつらい事例が並ぶ。

 「利用者の息子に寝室に連れ込まれ、触られた」「調理中に後ろから抱きつかれた」「ヘルパーのくせにと物でたたかれ、体を触られた」

 上司や同僚に相談しても、状況は変わらないとする人が目立っている。「介護職は我慢が当然」「ハラスメントも業務のうち」という意見もあった。

 介護の現場は自宅や施設の個室など、外の目が入りにくい場所が多い。ベッドからの起き上がりや入浴、排泄(はいせつ)、着替えの手伝いなど、体が触れるサービスもある。こうした環境や当事者が言い出しにくい状況のなか、できる対策には何があるのか。

 厚生労働省が定める訪問介護などの運営基準では、事業者は「正当な理由」がないとサービスの提供を断れない。ハラスメントも正当な理由の一つにするべきだと、ユニオンは国に求めている。傾聴に値する。利用者と1対1とならないために、できるだけ複数で介護にあたることができるよう、人材や予算の確保も急ぐ必要がある。

 利用者の行動に、認知症などが影響を及ぼしている場合もあるかもしれない。事業者は利用者や家族に、「ハラスメントをしない」というルールを守るよう、うまく伝えていきたい。

 介護ロボットや監視カメラといった機器の活用も、問題の解決に役立つだろう。介護職の地位が低いと見られないように、賃金水準を引き上げていくことも検討課題だ。

 もちろん、介護に携わる人たちは、我慢しなくていい。どう対応していくべきか、あきらめずに周囲に相談してほしい。

 日本は遠からず、3人に1人が65歳以上の社会になる。介護職の労働環境が変わらなければ、介護サービスの提供が持続可能ではなくなってしまう。

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