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 自民党総裁選は事実上の首相選びである。投票権は党所属の国会議員と党員・党友にしかないが、国のかじ取りに幅広い国民の支持と理解を得ようというのなら、開かれた論戦に努めるのが当然だ。

 しかし、自民党、とりわけ安倍首相の視野には、国民の姿などないかのようだ。

 首相が立候補を表明してから1週間余り。新たな3年の任期に臨む政権構想はいまだ示されず、記者会見も開かれない。挑戦者の石破茂・元幹事長が早々に公約を発表し、討論を求めているにもかかわらずである。

 首相の関心は専ら、内輪の票固めに向いている。国会議員や地方議員、業界団体の幹部と連日、会合を重ね、きのうは首相支持の5派閥を中心とした合同選挙対策本部の発足式で、5年8カ月の政権の成果を並べ、支持を訴えた。

 論戦に消極的な首相の姿勢は、総裁選の運営にも反映している。街頭演説会は全国5カ所のみ。前回2012年の17カ所から大きく減った。

 さらに選挙期間中の10~13日、首相は国際会議に出席するためウラジオストクを訪れる。この間は事実上の「休戦」だ。「外交の安倍」を一方的にアピールできる首相に対し、挑戦者の不利は否めない。

 首相は7日の告示を待つことなく、速やかに政見を明らかにし、石破氏との政策論争に臨むべきだ。

 自民党の総裁選管理委員会は先週、新聞・通信各社に対し、「公平・公正」な報道を求める文書を配った。インタビューや記事、写真の内容や掲載面積について、各候補者を「平等・公平」に扱うことなどを細かく求める異例の内容である。

 ニュースをどう報じるかは、そもそも各報道機関が自主的に判断すべきものだ。ましてや、政党の代表選びは、国政選挙と違って公職選挙法の対象外にある。発信を強める石破氏を警戒してのことなら、自らが積極的に論戦に応じればよいだけのことだ。

 首相の出身派閥の細田派は、所属議員に「首相の3選に向けて全力を尽くして応援する」という誓約書への署名を求めた。有権者に選ばれた、国民の代表である国会議員に対し、異様な締めつけと言わざるを得ない。

 森友・加計問題を引きずる首相としては、3選後の求心力維持のため、しゃにむに「圧勝」を演出したいのかもしれない。しかし、こんな内向きな総裁選を見せられては、国民はしらけるばかりだ。

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