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 営業現場に無理を押しつけ、従業員のモラルが荒廃する。そんな状態で、まっとうなビジネスを営めるはずがない。

 宅配便最大手ヤマトホールディングスの子会社が、法人顧客向けの引っ越し事業で、料金の過大請求を繰り返していた。先日公表された外部専門家による調査委員会の報告は、荷物量を意図的に多く見積もる事例が横行していたことを指摘した。

 データが残る過去2年分だけで17億円の過大請求のうち、16%分は「悪意で上乗せした見積もり」だったと推定。四国統括支店をはじめ、組織的とみられる不正も広がっていたという。

 ヤマト側が引っ越し事業を一時中止し、子会社社長の降格処分をしたのは、当然だろう。

 顧客をだますような行為が現場に蔓延(まんえん)していたのは、深刻な事態だ。ルールを守る意識を急いで取り戻す必要がある。

 加えて重大な問題は、現場に負担や混乱を強いるような体制を、経営側が長年にわたって放置していたことだ。

 調査委員会によると、現場では割引率が高い法人顧客の赤字受注を問題視する声が多かったという。他部署で決まった割引率を前提にして採算をとるために、荷物の量を過大に見積もったといったケースだ。

 そもそも商品が現場の声を聞かずに設計され、運用上の無理があったとも指摘されている。仕組みが分かりにくく、見積もりが多すぎた場合に事後に金額を修正するといった約款も、多くの従業員が知らない状態だった。

 コンプライアンス体制も機能していなかったようだ。報告書によれば、意図的な過大請求を問題視する告発や指摘が、2010年ごろから、内部通報窓口や社内の会議で断続的に繰り返されてきたという。

 しかし個別事案への場当たり的な対処にとどまり、問題を是正できなかった。全社的な調査や対応に乗り出したのは、一部で報道されてからだ。

 ヤマトは昨年、巨額の残業代が未払いだったことを認め、支払いを始めた。一方で、運送料の値上げにも踏み切った。今回の問題は分野こそ異なるが、商品の値付けの無理が起こしたという点で一定の共通点がある。

 顧客には約束通りの商品を提供し、社員には正当な賃金を払う――。この大前提を破ってまで目先の価格競争力にこだわっても、結果的には信頼を失うだけだ。いまや公共インフラに近づく宅配便を担う企業として、そのことを改めて確認してほしい。

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