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 裁判などを経て、離婚後に子どもを引き取ることや養育費の支払いを受けることが決まったのに、相手が実行しない――。そんな事態をなくすために、民事執行法の見直しを検討してきた法制審議会の部会が先日、改正要綱案をまとめた。

 裁判の結果を相手が無視したり、財産を隠したりして、権利が宙に浮いてしまうことは、かねて問題になっていた。

 要綱案はこれに応える、おおむね妥当な内容だ。

 財産隠しを防ぐ手立てとしては、裁判所が金融機関に対し、相手方の預貯金情報の開示を命じる規定が盛りこまれた。また子どもの養育費などの支払いをめぐっては、別れた配偶者らの勤務先情報も開示命令の対象となった。仕事先を変えて支払いを逃れる例は少なくなく、母子家庭などの貧困の一因になっている。新たな仕組みが適切に機能するよう期待したい。

 改正のもうひとつの柱は、離婚後に一方の親が子を連れ去るなどした場合、裁判所が「監護者」と認めた親のもとに戻すルールを明文化したことだ。

 いまは子どものための特別な定めはなく、一般の動産と同じ条文が適用される。ただし、子が怖がったり混乱したりしないように、連れ去った親が一緒にいる時にかぎって、裁判所の執行官が子を預かり、監護者に引き渡す運用にしている。

 このため、同居中の親が抵抗したら対応はきわめて難しくなる。要綱案は条件を逆転させ、監護者の親が立ち会っていれば強制執行できるようにした。

 国境を越えた子の引き渡し手続きを定める「ハーグ条約実施法」も、同じように見直す。日本は4年前に同条約に加盟したが、裁判所が命令しても実行されないケースが多く、他国から批判を浴びている。

 裁判所の判断が尊重されなければ、社会の基盤はゆらぎ、いずれ立ちゆかなくなる。執行制度の整備は避けて通れない。

 とはいえ子どもと向き合う際には、これまで同様、慎重な対応が求められる。監護者の親がいるからといって、下校途中の子を強引に連れて行くようなことは望ましくないだろう。

 要綱案も、強制執行にあたっては「子の心身に有害な影響を及ぼさないよう配慮しなければならない」と明記している。執行官の研修の充実や、児童福祉の専門家との連携の強化などをあわせて進める必要がある。

 執行しやすくなるからこそ、「子の福祉が最優先」という原則を、関係者すべてが改めて胸に刻まなければならない。

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