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 深刻な災害への対応を最優先するのは当然だ。ただ、事実上の首相選びである。実質的に短縮された選挙期間の中で、論戦の機会を十分に確保し、濃密な政策論争を実現しなければいけない。

 自民党総裁選がきのう告示され、3選をめざす安倍首相と石破茂・元幹事長との一騎打ちが決まった。5年9カ月に及ぶ長期政権の下、「1強」の弊害があらわになった現職首相に、党役員や閣僚を歴任した論客の石破氏が挑む構図だ。

 しかし、北海道で震度7を観測した地震を受け、党は9日までの3日間、選挙活動の自粛を決めた。10日の所見発表演説会と共同記者会見が論戦のスタートとなるが、首相がすぐにロシアを訪問するため、20日の投開票まで運動期間は正味、ほぼ1週間しかない。

 生存率が著しく下がるとされる「72時間」の対応に万全を期すべきなのは論をまたない。ならば、いっそのこと、告示日自体を遅らせ、選挙全体を後ろ倒しにする、告示日を変えないなら、投開票日を延ばすなどの手立てはできなかったのか。

 石破氏は災害対応と論戦を両立させるため、総裁選の延期を主張した。首相の総裁任期は9月30日まである。国連総会などの外交日程が控えているにしても、柔軟な対応ができないはずはない。

 こんな心配をするのも、国会議員票の多くを固め、優勢と目されている首相側が、一貫して論戦に後ろ向きな姿勢を示しているからだ。首相は結局、告示日の前に、新たな3年の任期に臨む政権構想を明らかにしなかった。

 二階俊博幹事長が「立候補した瞬間に(勝敗は)決まってんだ」と語るなど、党内には、開かれた論争を通じて、党の政策を磨き、広く国民の理解を得ようという機運はほとんどないようだ。

 「ポスト安倍」候補のひとりと目されていた岸田文雄政調会長は、7月に早々と戦線を離脱し、首相支持を明言。安倍1強に苦言を呈してきた野田聖子総務相も、3年前に続いて20人の推薦人を集められずに立候補を断念し、首相支持に回った。

 400人を超す国会議員を抱えながら、人材の枯渇と活力の低下は目をおおうばかりだ。

 今回の総裁選は、少子高齢化など、さまざまな難題に直面している日本社会の今後のあり方を国民に問う格好の場であるはずだ。

 その機会を生かせないとしたら、政権党として情けない。

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