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 東京医科大が入試の際、得点調整をして女性を合格しにくくしていたことが判明して1カ月余。背景にある女性医師を取りまく環境の見直しが、社会の課題に浮上している。

 出産や育児で現場を離れるケースが多い。それが同医大による女性差別の理由とされる。

 宿直ができなかったり途中退職したりすれば、周囲が穴を埋めなければならないとして、理解を示す声もある。だがそれは、女性に家事や育児の負担を一方的に負わせている現状を追認し、あわせて男性医師については「私生活を犠牲にして長時間労働する」という生き方を当然視することに通じる。志ある若者を医療界から遠ざけ、質の低下を招きかねない。

 大切なのは、男女を問わず、家庭や個人を大切にしながら仕事ができる状況をつくることだ。女性医師が働き続けられれば、他の勤務医の労働条件の改善にもつながる。医療界は地方の医師不足や診療科による偏在なども抱えていて、「解」を見いだすのは容易でないが、着実に歩を進めるしかない。

 宿直の免除や短時間勤務の導入。夜間早朝でも利用できる保育制度。職場を一時離れても、最新の知識や技術を習得できる研修や実習の充実――。

 どの職場にも通じる対策だが、医師にはより高い専門性が求められることを考えれば優先度は高い。財政支援もためらうべきではない。

 仕事そのものの見直しも欠かせない。例えば複数主治医制の導入だ。主治医は、休日や時間帯を問わずに起きる患者の急変に対処せざるを得ないことも多い。だが複数の医師がチームで責任を共有する体制にすれば、臨機応変の対応が可能になる。

 医師の業務のうち、看護師や薬剤師、病院スタッフで担えるものを洗い出し、ゆだねる取り組みも、もっと進めるべきだ。単なる下請けにならないよう、新たな資格や職種を設けることも検討されていい。複数主治医制にせよ業務移管にせよ、患者の側も、長い目でみれば質の高い医療につながると理解して、後押しする必要がある。

 東京医大問題を受けて文部科学省が全国81大学の医学部を調べたら、この6年間のいずれの年も、6~7割の大学で男性の合格率が女性を上回っていた。

 不当に扱いの差をつけたと答えたところは同医大以外にないというが、「不自然」との指摘は少なくない。文科省は調査を尽くすとともに、こうしたデータを大学が自ら開示して、透明性を高めていかねばならない。

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