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 好試合で盛り上がった全国高校野球選手権大会が終わりました。35度超えが当たり前だったこの夏。読者からは猛暑に関する意見や問い合わせが多数寄せられました。「熱中症対策は大丈夫なのか」「試合開始時間を早朝や夜間にずらしてはどうか」「ドーム球場でやるべきではないか」――。今回が第100回記念大会の節目だということもあって、「春夏2回を春に一本化しては」「開催時期を秋に動かせないか」といった声もありました。差し迫った問題は、「熱中症対策は徹底できているか」でしたので、8月14、15日の2日間、甲子園球場まで足を運び、現地の様子を見てきました。

 結論的に言えば、選手たちの体調管理、水分補給、何かあった際の救護態勢は手厚く準備されていると思いました。試合中、ベンチ前で水を飲む選手の姿も多く見かけましたし、選手の様子に異常があれば、理学療法士が対応にあたるべくベンチ裏に詰めていました。また、応援スタンド、審判などへのケアや、場内放送、電光掲示板での給水の呼びかけも従来になく細やかに行われていました。

 結果、大きな事故もなく大会が無事に閉幕したことは何よりだったと思います。ただ、来夏以降も猛暑が去りそうな気配は一向にありません。今春から甲子園でも延長タイブレーク制が導入され、本大会でも2試合に適用されました。新制度に対する賛否両論の声は読者の中にもありましたが、現場での混乱が何一つなく、スムーズに受け入れられたことは喜ばしい限りと思います。もっともこれが、選手の健康管理、けが対策のオールマイティーでないことは言うまでもありません。

 ピッチャーの投球数や回数に制限を設けるべきではないか、3回戦と準々決勝、あるいは準決勝と決勝の間に休養日を設けるなど、日程にもう少し余裕をもたせられないか。来年以降、引き続き検討すべき課題は残されています。

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 また、以前から指摘されている“勝利至上主義”の弊害(ピッチャーの登板過多など、過重負担が選手を「つぶす」ことになってはいないか、長期的な選手育成の視点がおろそかになっていないか)などは、もっと議論を深めるべきでしょう。「感動と興奮」のドラマにだけ目を奪われているわけにはいきません。

 「日本スポーツ振興センター」のまとめによると、1975年から2017年(速報値)の間、学校の管理下での部活動中に熱中症で死亡した生徒は146人。うち37人が野球部員だといいます。全体の約25%です。競技人口が多いことを勘案するにせよ、練習時間の長さはしばしば指摘されるところです。部活のあり方、指導者の意識改革も再検討されなければなりません。朝日新聞は継続的にこの問題を取り上げていますが、読者の関心も高いテーマだけに、今後も追い続けてほしいと思います。

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 さて、甲子園に赴いて、現場で取材している記者や、大会運営にあたる朝日新聞社の人たちを間近に見ることができたのも幸いでした。地方大会から2カ月間取材にあたり、地元代表に同行して甲子園に来た若手記者の話も聞きました。一昨年まで三重大会で10年連続初戦敗退だったにもかかわらず、夢舞台への初出場を果たした白山高校。吹奏楽部員が8人のところ、町のアマチュアジャズバンドのメンバーや、他校のブラスバンド部員が加勢し、人口1万1千人の町などから2千人がバス50台で応援に駆けつけたといいます。白山高を追ってきた入社2年目の甲斐江里子記者は、「山あいにある弱小高校が“日本一の下克上”で、ここまで勝ち上がってきました。その感激をともにできたのはラッキーでした。また、この間たくさんの記事を締め切りに追われながら書きました。激務でしたが、記者としてのスキルは格段に上がったと思います」と語ってくれました。

 その一方で興味深かったのは、この大会で実験的に導入された電子スコアブックと、それに基づくAI(人工知能)記者の戦評記事(デジタルで配信)でした。過去のスポーツ面に載った約8万の高校野球の戦評記事とイニングを組み合わせたデータをAIに記憶させ、記事を書けるように開発したといいます。スポーツ記者が入力した電子スコアブックをAI記者が読み込み、注目したいプレーを選び出し、その組み合わせに見合った記事を1秒後には出力。読んでみると、これがなかなかの出来栄えでした。定型化した記事には十分対応可能だということが分かりました。データの蓄積とその活用によって仕事を合理化できる部分と、人があくまで関与すべき領域との峻別(しゅんべつ)を図り、取材・運営体制を見直すことも、今後の大きなテーマであることを思いがけないかたちで発見しました。

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 こうの・みちかず 1953年生まれ。「婦人公論」「中央公論」「考える人」の編集長を歴任。2017年に株式会社ほぼ日に入り、ほぼ日の学校長。

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