荒れ果てた畑…食卓に影響も 北海道地震

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 北海道を襲った地震は食卓にも影を落としている。ジャガイモやニンジン、トマトなど、北海道産が高い全国シェアを占める野菜の出荷や輸送が滞り、一部は値段も上がっている。出荷は徐々に元の状態に戻りつつあるが、復旧には地域差も出ている。

 「どうしたらいいのか……」。震源地に近いむかわ町でトマトを栽培する村田伸博さん(33)は、荒れ果てたビニールハウスと畑を前に言葉を失った。数年前に花からトマトに切り替え、いまでは21棟のハウスで年間5トンを収穫。2千万円の売り上げがある。

 地震直前の台風でハウスの半数のビニールがはがれていた。補修しようと思っていた矢先、地震でトマトの大半が倒れた。余震の心配から車中泊を重ね、体は疲れ切っているものの、傷がないトマトの収穫に追われる。出荷はできるようになったが、「目の前のトマトを集めるだけで手いっぱい」(村田さん)。破れたハウスの屋根からは雨がしたたり、トマトの病気が気がかりだが、ハウスの復旧までは考えが回らない。

 ■貨物列車が運休

 直接被害を受けていない地域も、停電で野菜を選別する機械が動かず、貨物列車も止まった。電力供給の再開で出荷は回復しつつあるが、貨物列車の復旧が15日以降になる区間もある。

 ホクレン農業協同組合連合会帯広支所によると、道東の十勝地方では、6割を鉄道に頼るジャガイモやタマネギなどの輸送に影響が出ている。JA士幌町は11日から走らせる予定だった埼玉県行きジャガイモ専用列車が出せず、トラックで苫小牧などに運ぶことを検討している。ダイコンやニンジン、ブロッコリーはトラック輸送の割合が高く、回復ペースは速いという。

 東京・大田市場では10日、北海道産ニンジンが地震前の4日と比べて6割高、ダイコンは1割高程度で取引された。ただ、卸売業者は「10~11日は品物が少ないかもしれないが、入荷量は回復しており、日がたつにつれて品不足も解消されるだろう」と話す。

 スーパーの店頭でも一部の野菜が品薄ぎみだ。

 首都圏で数十店舗展開するあるスーパーでは、北海道産を使っていたホウレンソウを群馬産に、ダイコンは青森産に切り替えた。価格もホウレンソウは地震前の1束150円前後が250円前後に値上がりし、ダイコンも1本158円前後が250円を超えている。

 週末の北海道フェアでは、6種類のトマトが入荷しなかった。店舗の担当者は「北海道産以外の品も出てきたが、数が少ないため小売業者間で取り合いになっている」と明かす。

 ■復旧のきざしも

 都内の別のスーパーでは、ダイコンやニンジン、トウモロコシなど北海道産野菜の入荷が週明けから少しずつ戻り始めた。入荷量が少なく、価格も高いが、店長は「停電さえ復旧すればこの状態はそれほど長く続かないのでは」と話す。

 農林水産省は10日、停電でほとんどが停止した北海道の乳業工場(処理能力が1日2トン以上)について、39カ所すべてが動き始めたと発表した。(上地兼太郎、伊沢健司、高橋末菜、山村哲史)

 ■東京都中央卸売市場での北海道産野菜の取引

 10日と地震直前の価格差/北海道産が占める割合(昨年9月)

     *

 <ダイコン> +9%/64%

 <ニンジン> +62%/98%

 <トマト> -5%/17%

 <ジャガイモ> +11%/92%

 <タマネギ> 変わらず/93%

 ※価格差は大田市場の相対取引で最も販売数量の多い価格(ジャガイモ、タマネギは高値)を4日と比較

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