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 「流血と涙はたくさんだ」

 叫びとも祈りとも聞こえる言葉とともに、イスラエルとパレスチナが「オスロ合意」に調印して、きょうで25年となる。

 1948年のイスラエル建国から続く紛争を終え、パレスチナは暫定的な自治を始める。その先には、イスラエルと平和共存するパレスチナ国家が生まれる。そんな「二国家解決」への希望が込められていた。

 ところが、パレスチナ国家はいまだ実現していない。和平交渉は4年前から止まっている。

 パレスチナ人は、イスラエルの占領地だけでなく各国に散らばる。難民キャンプなど劣悪な環境で多くが暮らす。

 パレスチナの問題は中東の不安定の源であるばかりか、戦争やテロの背景として世界を揺るがせてきた。国際社会は、理不尽な現状を放置すべきでない。

 最近、合意を踏みにじる行為が目につく。

 その一つが、イスラエル国会が可決した「ユダヤ人国家法」だ。イスラエルはユダヤ人の民族的郷土とし、自決権はユダヤ人にのみ認める。公用語はユダヤ人の使うヘブライ語に限る。

 パレスチナとの和解に逆行する内容だ。長い曲折や停滞はあっても、紛争解決には「二国家共存」しかない。欧州連合(EU)が懸念を示すのも当然だ。

 新法にはさらに問題がある。入植地の建設を促す点だ。

 占領地にユダヤ人の住宅地を拡大する入植活動は国際法違反であり、国連安保理は繰り返し非難してきた。和平に取り組む意思を疑わざるを得ない。

 強硬姿勢の陰には、米トランプ政権の露骨な肩入れがある。

 パレスチナも将来の首都と想定するエルサレムをイスラエルの首都と認め、5月には米国大使館を移転した。パレスチナ側が「米国を仲介者と認めない」と反発すると、米国にあるパレスチナ代表部の閉鎖を決めた。

 パレスチナ難民の教育や医療などを支える国連機関への拠出金も完全に止めると発表した。人道援助を人質に脅しをかけるような外交は容認できない。

 シリア、イエメン、リビアなど中東各国で続く深刻な内戦や紛争のなかで、パレスチナ問題は埋もれがちだ。いま大事なのは、パレスチナ人の苦境を世界が忘れてはいない、というメッセージを伝えることだ。

 日本は難民への経済支援を追加し、イスラエルに入植活動の凍結を求めるなど、米国とは一線を画している。節目の年に、EUや中東諸国とも連携して、オスロ合意のともした希望を絶やさぬ努力を尽くして欲しい。

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