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 「100年に1度」と言われた世界的な金融危機から10年が経つ。何を学び、今後にどう生かせばよいのか。

 改めて確認すべきは、バブルはいずれはじけ、対処が遅れれば傷口が広がるということだ。

 米国の投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)をピークとする危機の展開は、90年代に金融危機を経験した日本からすれば、見覚えのある光景だった。

 不動産バブルの熱が冷め、積み上げた融資が焦げ付き始める。当局は危機の規模を見誤り、対応が後手に回る。そして大銀行が破綻し、経済全体にショックを与える――。

 当時、日本の金融システムは健全性を保った。だが、円高と海外需要の急減で、激しい景気後退に陥り、「派遣切り」が横行した。国境を超えた結び付きが強まり、世界経済の波乱から無縁ではいられない。それがもう一つの教訓だろう。

 各国は、大規模な金融緩和などを通じ何とか危機を鎮めた。その後は景気拡大が続き、失業率も下がった。だが、完全に平時に戻ったともいえない。米国の金利水準はなお低く、日欧は量的緩和を継続中だ。日本は企業利益は回復したものの、賃金や消費の伸びは勢いを欠く。

 危機の再来はないのか。この10年で銀行規制は強化された。だが、万全は有り得ない。危機は規制の網から漏れたところが発火点になるのが常だ。

 長引く低金利や大規模緩和は次のバブルの温床になりがちだ。経済全体にとって緩和が必要と判断するのであれば、危険な投融資が蓄積していないか、監視を強化すべきだ。

 米国の株価は、史上最高値を更新している。一方で、途上国や新興国では民間の債務が膨らみ、通貨安のショックも懸念される。国内でも、仮想通貨への投機や一部のアパートローンなど警戒すべき動きがある。

 何より心配なのは、いったん危機が起きたときの対応力だ。

 格差拡大が放置された米国では、社会の分断が生んだトランプ政権が保護主義に突き進む。欧州も政治的不安定さが増すばかりだ。一方で、危機後に国内総生産額で日本を抜いた中国は、共産党独裁体制のまま世界経済での存在感を高めている。

 10年前はG20が初の首脳会議を開くなど、曲がりなりにも国際協調が実現した。しかし、今の「自国第一」の風潮が続いたときに、危急の際の協調ができるのか。デフレ脱却を果たせず、マクロ経済政策の余力も乏しい日本にとって、先行きは楽観できない。

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