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 12億人のカトリック信者を擁するバチカン(ローマ法王庁)が、子どもへの性的虐待問題で揺れている。

 米国や欧州など世界各地で、多くの聖職者が手を染めていた実態が次々にわかった。混乱のなか、教会内から公然とローマ法王への辞任要求が出る異例の事態に発展している。

 この問題は何十年も前から報告されてきた大罪であり、カトリック教会が抱える最大の人権侵害だ。国連の委員会は、被害者が何万人にも及ぶとした。

 法王は、今度こそ真相を徹底究明し、問題に終止符を打たなければならない。関係国の司法手続きにも協力しつつ、加害者らを厳格に処分し、有効な防止策を講じる必要がある。

 カトリック教会は本来、人権を守るとりでであるべき存在だ。軍事独裁などによる弾圧から人々をかくまう事例は多い。最近も、欧州の政府が拒む地中海上の移民・難民を、教会が仲介して上陸させた。

 そうした人道的な功績の一方で、性的虐待の事実を教会は長く隠蔽(いんぺい)してきた。加害者の神父らをひそかに異動させる。被害者に圧力をかけてもみ消す。そんな行いが蔓延(まんえん)していた。

 欧州外から1300年ぶりに就任した現職のフランシスコ法王は及び腰だった歴代法王と比べ、問題解決に積極的だ。訪問先の国々で被害者らに謝罪を重ね、加害者の聖職者資格を剥奪(はくだつ)する措置などをとってきた。

 それでも対応の遅さや不十分さを指摘する声は多い。高齢化する被害者も増えるなか、速やかな対応が求められている。

 懸念されるのは、教会内の「改革派」と「保守派」による権力抗争だ。

 現法王はバチカンでの行政職経験がなく、官僚主義に批判的だ。バチカン銀行の金融不祥事などタブー視されてきた暗部にも挑む「改革派」とされる。

 同性愛や離婚にも柔軟さを示し、世界中で高い人気を誇るが、保守派の高位聖職者らは不満を強めているとみられる。

 そんな組織内の対立で問題への対処を滞らせることは許されない。人権侵害はただちに是正されねばならない。

 バチカンには、宗教団体にとどまらない影響力がある。冷戦の終結で役割を果たしたほか、現法王も米国とキューバの国交回復を仲介するなど、平和外交で存在感を示している。被爆国日本にも高い関心を寄せ、来年中の訪日に意欲的だ。

 あらゆる人権を尊重する組織にバチカンを生まれ変わらせられるか。世界が注目している。

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