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 放送中のテレビ番組をインターネットでもそのまま視聴できる「常時同時配信」に向けて、NHKが動き出している。総務省の有識者検討会が7月、条件つきで実施を認める報告書案を公表したのを受けたものだ。

 問題は、検討会の「条件」を満たすだけの自己改革案を、NHKが市民に示すことができるかどうかだ。すみやかに具体像をまとめ、議論の環境を整える義務がNHKにはある。

 常時同時配信には巨額の設備投資がいる。安易な導入は、受信料収入に支えられるNHKの一人勝ち状態を招き、民放との二元体制は崩れ、言論や表現の多様性が失われかねない。

 だがNHKはそうした懸念を十分理解しないまま、昨年、ネットのみの利用者からも受信料を徴収する構想を性急に打ち出すなどして、不信を呼んだ。

 そのため検討会も手放しではゴーサインを出さなかった。民放との連携に加え、相次ぐ不祥事を受けたコンプライアンスの確保、グループ全体の経営情報の公開、受信料の継続的な見直しなどを、導入の前提とした。これらは、政権との距離を適切に保つこととあわせ、朝日新聞が社説で繰り返し指摘してきた改革の方向性と重なる。

 このうち民放との連携に関しては、今月になって、共通の配信基盤をつくることを念頭に協議の場が設けられた。また、見逃した番組を後に視聴できるサービスが、NHKと民放で別建てになっている現状の整理についても、検討するとしている。

 一方でガバナンス改革の行方は不透明だ。だが何より大切なのは、この宿題への回答だ。

 NHKが望むように、来年度中に常時同時配信を行うには、次の通常国会で放送法を改める必要がある。しかし、日程ありきで進めて良い話ではない。手をつけやすいところだけを見直し、残りのテーマは先送りしたり、うやむやにしたりするようなことは許されない。

 例えば受信料だ。17年度の収入は6913億円と最高を更新し、繰越金もこのところ毎年600億円を軽く超す。なし崩し的な業務拡大に歯止めをかける上でも、社会への還元、つまり引き下げは急務の課題だ。

 12月には4K・8Kの本放送が始まり、六つのテレビチャンネルをもつ。これについても視聴者ニーズを踏まえた削減・再編の議論は避けて通れない。

 放送にとどまらない「公共メディア」への進化を唱えるのなら、責任の重みを自覚し、社会が納得できる具体的で踏みこんだ改革姿勢を示す必要がある。

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