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 出生届が出されず戸籍がないため、社会生活で様々な不利益をこうむる。こうした無戸籍問題への対策を検討するため、法務省や弁護士、学識者らでつくる研究会が10月にも発足する。

 背景には、明治時代から変わらない「嫡出(ちゃくしゅつ)推定」という民法の規定がある。問題の一刻も早い解消に向けて、幅広い議論と具体的な提言を期待する。

 民法は「婚姻中に妊娠した子は夫の子」「離婚後300日以内に生まれた子は元夫の子」と推定すると定める。様々な事情からこの適用を避けようと母が出生届を出さない。そうして無戸籍になった子は、国が把握しているだけで700人を超す。

 例えば、夫の家庭内暴力(DV)から逃げて別居中の妻が、新しいパートナーとの間に子ができた時、出生届を出すと戸籍上は夫の子になってしまう。

 民法には、生まれた子との親子関係を否定する「嫡出否認」の制度もあるが、否認権があるのは夫だけで妻や子にはない。

 この嫡出否認の規定が男女平等を定める憲法に違反するとして、無戸籍問題に直面した60代の女性や娘、孫らが国に損害賠償を求めて裁判で争っている。

 大阪高裁は8月の控訴審判決で「合憲」と判断した。法的な父子関係を安定させるため、否認の権利は限定的であるのが望ましいとの理由だ。一方で妻や子が大きな不利益を受けることがあり得ると認め、妻や子にも否認権を認めるかどうかは「国会の立法裁量に委ねられるべき問題」と指摘した。

 女性は約30年前、夫のDVから逃れて別居している間に、別の男性との間に娘が生まれた。離婚成立後、この男性の子として娘の出生届を出そうとしたが民法の規定を理由に受理されず、娘もその子の孫も元夫が死亡するまで無戸籍が続いた。

 娘は旅券を作れず、孫には小学校入学前の健康診断の連絡が届かなかった。女性は「苦しんでいる人たちは、一日も早い解決を望んでいる」と訴える。

 大阪高裁は、昨年11月の一審・神戸地裁に続き、制度に不備があるとしながら現状を追認するのにとどまった。女性らは最高裁に上告したが、制度の見直しは待ったなしだ。

 発足する研究会は、否認の権利を妻や子に広げる是非などを議論するという。それだけでなく、嫡出や結婚に関する規定を幅広く見直すべきだ。

 上川陽子法相は記者会見で「子どもの視点に立った家族の在り方の問題に真剣に取り組む」と述べている。その言を実行しなければならない。

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