[PR]

 伝統工芸の優れた技と美を競う国内最大規模の公募展「日本伝統工芸展」の第65回展が、19日から東京・日本橋三越本店で開かれる。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門に、全国から1517点の応募があった。このうち入賞した16点を含む入選作品622点と、日本工芸会員の遺作3点を展示する。審査委員に優秀賞7作品の魅力を中心に解説してもらった。

 ■漆芸

 朝日新聞社賞「切金螺鈿箱(きりかねらでんばこ)『青麦(あおむぎ)』」 金城一国斎(53)=広島市

 高松宮記念賞「乾漆螺鈿天牛箱(かんしつらでんかみきりむしばこ)」 しんたにひとみ(31)=奈良市

     *

 「青麦(あおむぎ)」は、青々とした春の麦畑を思わせる緑の漆塗りに、金銀の切金(きりかね)と螺鈿(らでん)による麦のシャープなシルエットを重ね、若葉が出そろい実りへと向かうみずみずしさを強調する。

 「乾漆螺鈿天牛箱(かんしつらでんかみきりむしばこ)」は天牛(かみきりむし)をイメージの源泉とする。丸く硬い前羽に見立てたユニークなフォルムを乾漆でつくり、黒の漆塗りに螺鈿で花の文様を散らし、ふたを開けるとカミキリムシが現れる。

 青麦は春先、天牛は晩夏の季語。ともに季節を踏まえ、独自のスタイルで生の息づかいを表象する。

 (山崎剛・金沢美術工芸大学学長)

 ■染織

 文部科学大臣賞「絞(しぼ)り染(ぞめ)訪問着『緑影(ろくえい)の迹(あと)』」 小倉淳史(71)=京都市

 NHK会長賞「花織帯(はなおりおび)『クリスタル』」 楠光代(62)=千葉県八千代市

     *

 「緑影(ろくえい)の迹(あと)」は竹林にさす逆光の景色を、陰影による斜めの面と線の大胆な構成と、絞りの柔らかい風合いで表現し存在感を示す。

 「クリスタル」は沖縄の花織に魅せられた浮き織りを用いた。藍色による経縞(たてじま)のグラデーションの地に花織を生かしたクリスタルの輝きを見せ、強い印象の作品となる。

 両作品とも白に対する意識が高く、絞り染訪問着はモノトーンの中に白場が大変美しく映え、花織帯は白の浮き糸と縞が藍色をより深い色合いへと導く。

 (鈴田滋人・重要無形文化財「木版摺更紗(もくはんずりさらさ)」保持者)

 ■陶芸

 日本工芸会会長賞「線描幾何文花入(せんびょうきかもんはないれ)」 森田由利子(69)=奈良県橿原市

     *

 円錐(えんすい)形を逆さまにしたようなシンプルなフォルムに、不ぞろいな幾何学文がランダムに配されている。よく見るとその文様は、細かな線描の密度コントロールによって表されており、豊かな質感も醸し出している。作者は、素地の上に白と黒の泥漿(でいしょう)を塗り重ね、自然界の形から触発された文様を引っかくようにして描き出す。素材と技法の把握とその効果の見極めが、美しいグラデーションを生み出し、独特で柔らかな輪郭線を浮かび上がらせた。

 (唐沢昌宏・東京国立近代美術館工芸課長)

 ■金工

 日本工芸会総裁賞「四分一象嵌打出銀器(しぶいちぞうがんうちだしぎんき)」 前田宏智(57)=東京都江東区

     *

 銀の円板に銅と銀の合金「四分一(しぶいち)」を象嵌(ぞうがん)し、金づちと当て金を用いて成形する鍛金技法でつくられた器である。従来、文様を表す打込象嵌は、完成した器の素地に薄い紋金を鑞(ろう)付けして打ち込むのであるが、本作はまず平板に文様を象嵌し、これを打ち出しているので、文様は地金と共に絞られ、伸縮し、変化していく。白い銀地に打ち込まれたモノトーンの線の軌跡は、柔らかで伸びやかな文様となってシンプルな器形に調和し、伝統の技に作者の意図する独創的な境地を開いた秀逸な作品である。

 (大角幸枝・重要無形文化財「鍛金」保持者)

 ■木竹工

 東京都知事賞「黒柿蘇芳染嵌荘箱(くろがきすおうぞめがんそうばこ)『西方(さいほう)の風』」 渡辺晃男(65)=東京都多摩市

     *

 木工芸はその木の美しさがいかに作者の表現になっているかが見どころである。奈良朝より珍重される黒柿によるこの作品は、作者の思いのまま、見る人をいにしえへと誘う。蘇芳(すおう)で赤く染めてから拭漆(ふきうるし)を施す「赤漆(せきしつ)」は正倉院宝物に見られる古典技法である。繊細な錫(すず)の細線象嵌(ぞうがん)による唐花文とあいまって、遠く西域からのシルクロードを思い起こさせる。まさに西からの風が吹く。正統な指物(さしもの)技術により細部まで端正につくられ、正倉院に深く傾倒する作者の思いが結実した優品である。

 (須田賢司・重要無形文化財「木工芸」保持者)

 ◇あすから、日本橋三越で

 ■19日[水]~10月1日[月]、午前10時~午後7時(最終日は午後6時閉場)

 ■東京・日本橋三越本店 本館・新館7階催物会場(03・3241・3311)。入場無料

 ■作品解説 19日[水]=陶芸・福島善三▽21日[金]=染織・土屋順紀▽24日[月][休]=漆芸・金子賢治▽25日[火]=金工・原田一敏▽26日[水]=木竹工・諸山正則▽27日[木]=人形・今井陽子▽28日[金]=諸工芸・白幡明の各氏

 ■受賞者による作品解説 22日[土]=しんたにひとみ、小倉淳史、金城一国斎、森田由利子、池田貴普▽23日[日][祝]=前田宏智、渡辺晃男、楠光代の各氏

 ※いずれも午後0時30分から会場で

 主催 文化庁、東京都教育委員会、日本工芸会、NHK、朝日新聞社

 ※2019年1月23日[水]~29日[火]、仙台三越に巡回

こんなニュースも