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 ルールを守り、真摯(しんし)な気持ちで競技に向きあっている多くのスポーツ選手にとって、到底納得できない決定だろう。

 ロシアの国家ぐるみによるドーピング問題で、世界反ドーピング機関(WADA)は、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)の資格停止処分を条件つきで解除した。これにより、ロシア選手団が国際舞台に全面復帰する道が開かれた。

 だがロシアは、政府としての関与をいまだ認めていない。あいまいなままの幕引きは、スポーツの公平性と信頼性に大きな禍根を残す。WADAの存在意義も根底から問われよう。

 そもそもロシアをめぐる疑惑を暴いたのはWADAの調査だった。禁止されている薬物が広く使われ、しかもRUSADAの検査施設が中心となって、悪質な隠蔽(いんぺい)工作が行われていたことが明らかになった。WADAは15年11月に、RUSADAを資格停止にした。

 その後、ロシアは罰金の支払いや再発防止にむけた法整備に応じたものの、「国家ぐるみ」という認定は受け入れず、膠着(こうちゃく)状態が続いてきた。リオデジャネイロ五輪や平昌五輪などには、ロシアは公式参加は認められず、薬物を使っていないと証明された選手が、個人の資格で出場してきた。

 それが一転して今回の処分解除だ。当のWADA内部からも「政治が原理原則を負かしてしまった」(選手委員会トップのスコット氏=カナダ)との声が出ているという。

 背景にあるのは、スポーツ大国ロシアに対して毅然(きぜん)とした姿勢をとれない国際オリンピック委員会(IOC)の存在だ。曲折はあったが、政府の関与を認めないロシアを最後は容認し、今年2月にはロシア五輪委員会に対する資格停止処分を先んじて解除した。およそ支持できる行いではない。

 ロシアは14年ソチ五輪、18年サッカーW杯に続き、23年にはアジア大会に相当する「欧州競技大会」の招致に動いている。成功させたいIOCの思惑と重なり、まさに「政治」優先で事が進んでいる感が深い。

 情けないのは日本の対応だ。

 WADAの理事を務める水落敏栄(としえい)文部科学副大臣は、今回の処分解除に賛成票を投じた。

 ロシアの参加を得て東京五輪を盛り上げたい考えからだろうが、大会の見かけ上の成功のためにスポーツの本質をゆがめる罪は重い。「五輪のためなら許される」の姿勢は、逆に五輪に対する多くの人々の支持と関心をそぎかねない。

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