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 ある日、ノックの音がする。自宅のドアを開けると、当局者が立っている。無理やり連行され、「再教育施設」へ。共産党への服従を求められ、宗教も捨てろと拷問で迫られる――。

 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の報告などによると、中国の新疆ウイグル自治区ではいま、ウイグル族の住民に対して、こうしたことが実際に起きているらしい。

 報告は、再教育施設への収容者が「約100万人」にのぼるとも指摘する。正確な人数は不明だが、大規模な拘束が行われているとの点では専門家らの見方はほぼ一致する。

 許されない人権侵害である。

 これに対し、中国政府は「捏造(ねつぞう)だ」と反発しているが、説得力は乏しい。

 その理由の一つは、同自治区での外国人記者の取材活動を、厳しく制限しているからだ。地元の当局者による取材妨害が常態化しており、取材を受けた住民への露骨な嫌がらせも伝えられる。

 中国当局は隠蔽(いんぺい)をしてはならない。まず、記者の自由な取材を認めるべきだ。新疆でいったい何が起きているのか。テロ対策に名を借りた、不当な取り締まりはないのか。責任ある大国として、国際社会にその実態を公明正大に明らかにすることがなぜできないのか。

 中国のウイグル族は人口約1千万人のトルコ系少数民族で、多くはイスラム教徒。1930年代から40年代にかけて「東トルキスタン」建国をめざして2度の大規模な運動を起こした歴史を持ち、中国からの独立意識も一部にあるといわれる。

 ところが、その民族意識や信仰に対し、中国当局は粗暴な弾圧行為を繰りかえし、多数派である漢族への強引な同化政策を進めてきた。

 反発した一部の過激派は国内外でテロ事件を起こしたとされ、中東を拠点とする過激派組織「イスラム国」(IS)との関係も指摘されている。

 弾圧が当局への襲撃やテロを生み、それがさらなる弾圧へとつづく「負の連鎖」。これを止めるには強硬一辺倒ではなく、民族融和を進める必要がある。中国共産党政権は過去の政策の過ちを認め、民族間の信頼醸成に努めなくてはならない。

 米政府は、弾圧にかかわっているとされる一部の中国政府高官や企業に対する経済制裁を検討していると明らかにした。

 安倍首相は来月下旬に訪中を予定している。日本を含む国際社会はこの問題を座視せず、明確に改善を求めるべきである。

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