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 古いため池が決壊し、下流の住宅に被害を及ぼす。そんな危険性が、近年の大雨や地震で高まっている。ため池は全国に約20万カ所ある。実態を把握し、防災対策を強化したい。

 農林水産省によると、7月の西日本豪雨で32のため池が決壊した。広島県福山市では決壊による土砂災害で家が流され、3歳の女児が死亡した。堤防に亀裂がみつかり、付近に避難指示が出た地域もあった。

 同省は宅地に比較的近い所にある8万8千のため池を緊急点検し、先日「応急措置が必要」な池が1540カ所あったと発表した。とりあえず崩落を防ぐため土嚢(どのう)を積んだり、ブルーシートで覆ったりしたという。

 今後、水が漏れないように堤防を強化するなど、恒久的な対策をとる必要がある。

 ため池老朽化の危険性は災害のたびに指摘されてきた。

 東日本大震災では、福島県のため池が決壊して濁流が集落を襲い、8人の死者・行方不明者が出た。昨年の九州北部豪雨でも、福岡県朝倉市で48カ所のため池が被災している。

 ため池は雨が少ない地域で、農業用水を確保するために人工的に造られた。農家個人で所有するものもあるが、国や自治体の土地にある池を、周辺の農家が利用している例もある。だが農家の減少や高齢化で維持管理が行き届かず、放置されている池が多いのが実態だ。

 基本は、所有する農家や自治体が責任をもって堤の強度などを確認することだ。利用されず治水機能もない池は水を抜き、廃止を検討する。国には工事費の補助制度があり、亀裂の修理などに助成金を出す県もある。利用を促す必要がある。

 最大の問題は、危険なため池の把握が遅れていることだ。

 農水省は1万1千カ所を「防災重点ため池」とし、周知を自治体に求めている。基準は「下流に住宅があり、決壊すれば大きな影響を与える恐れがある」などで、自治体が判断する。だが、住宅が1戸あるだけで指定された例もあれば、数十戸で未指定という場合もある。7月に決壊した32カ所のうち、指定ため池は3カ所だけだった。

 危険なため池が監視の網に入るよう、基準をより厳格、かつ具体的にするよう急ぐべきだ。そのうえで、全体の半分しかできていない決壊時のハザードマップを、各市町村は速やかに作成して公表してほしい。

 住民も雨の降り方と池の水位に気を払い、決壊の恐れがある時の避難場所などを、日ごろから確認しておくことが大切だ。

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