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 ローマ・カトリック教会の法王庁(バチカン)と中国政府が、長年に及ぶ対立関係の改善へ向けて動き始めた。

 中国には信者が約1200万人いるが、この国は共産党の一党支配体制である。信者は、党の指導を受け入れる政府公認の教会と、バチカンに忠誠を誓う「地下教会」に分裂してきた。

 それは根本的には、信教の自由を認めていないために起きている問題だ。中国では、その他の宗教や少数民族などに対する厳しい弾圧の歴史がある。

 バチカンはその現実に目をつむることなく、中国政府との協議に慎重に臨むべきだ。あらゆる信者と中国国民の人権の尊重を忘れずにいてもらいたい。

 1951年の断交以来、最大の対立点は、司教の任命権だった。全世界の司教を任命できるのはローマ法王だけ、というのがバチカンの原則だが、中国はそれを認めてこなかった。

 先週発表された暫定的な合意によると、中国が独自に任命した司教7人を、バチカンが承認するという。バチカン側は大きく譲歩したことは否めない。

 最終合意がどうなるかは見通せない。ただ、中国公認の司教を受け入れて、形式的に公認教会と地下教会の「統一」を図っても、それで信者全員が真の自由を得るとは考えられない。

 習近平(シーチンピン)政権は、宗教活動が共産党の正統性と国の安全を脅かしかねないとして規制を強めている。隠れてきた信者らには、バチカンが中国の宗教政策を容認すれば、逆に弾圧が強まるという恐れが広がっている。

 近年では、同じキリスト教でプロテスタント系の非公認教会の破壊や閉鎖、十字架の撤去が相次いでいる。チベット仏教やイスラム教への迫害も続いている。そもそも中国は一切の宗教弾圧をやめるべきだ。

 一方でバチカンは、アジアでの布教で中国との関係改善は欠かせないとみて、80年代から非公式な接触を続けてきた。

 中国でキリスト教は、都市部の中間層を中心に広がっている。とくにプロテスタント系は、この約70年間で100万人から5千万人へ急増した。

 それだけにバチカンには焦りがあるのでは、とも指摘される。しかし、そんな思惑によって、世界が期待する法王の良識を曲げてほしくはない。

 バチカンは欧州で台湾と国交を持つ唯一の国でもある。中国は台湾への圧力も意識しているはずだが、中台関係の急激な変化を国際社会は望んでいない。バチカンには、政治外交の面でも配慮が求められている。

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