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 日米欧の貿易担当相が、世界貿易機関(WTO)の改革案を共同提案することで合意した。米国が保護主義に突き進み、中国との貿易紛争がますます激しさを増すいまこそ、改革に踏みだし、多国間の枠組みを守る機会とするべきだ。

 1995年に発足し、164カ国・地域が加盟するWTOは「共通の貿易ルールの取り決めと監視」「貿易紛争の解決」を担う。しかし現状では、その役割を十分に果たしているとは言いがたい。

 日米欧の共同提案では、貿易ルールから逸脱し、市場をゆがめる行為への監視や調査を強化するよう求める。貿易に影響を与えそうな制度や補助金の導入をWTOに報告しなかった加盟国には、不利益が生じるようなしくみも検討する。

 念頭にあるのは、自国企業に巨額の補助金を出し、国外の企業に技術移転を強要している中国だ。中国の振る舞いを正せるよう、機能強化をめざすことで、離脱も辞さない構えの米国をWTOにつなぎ留める狙いが、日欧にはある。

 全会一致を意思決定の原則にしている結果、意見がなかなかまとまらず、時代の変化に見合った対応ができないことも、長年の課題だ。共同提案では、着手できそうな論点から関係する複数の国でまず議論に入り、ルールづくりの協議を動かす考え方も共有した。

 これまでも、関係国が先に議論を進める方式で、デジタル製品の関税撤廃などで合意した例はある。柔軟な意思決定方式を広げることは、検討に値する。

 一方、「紛争解決」を担う上級委員会改革については今回、あまり議論しなかったという。いわゆる最高裁にあたる上級委員会は、判事に相当する委員1人の任期が9月末に切れ、3人態勢となる見込みだ。定員は本来7人だが、米国の反対などで任期が切れた委員の補充が進まず、このままでは機能停止に陥りかねない。

 紛争解決は、WTOが存在感を示してきた数少ない分野だ。その機能を守るため、共同提案を詰めていくなかで、解決の糸口を探りたい。

 米中の紛争に限らず、多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の挫折に表れたように、通商をめぐる主要国と新興国や途上国との対立は根深い。日米欧の改革案を、中国などの支持も得られる内容にし、対立の解消につなげることは容易ではない。

 日本は欧州と連携し、米国にも自制を促しながら、建設的な議論を主導していくべきだ。

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