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 行政の信頼を失墜させた組織のトップを、そのまま続投させる。そんなゆがんだ人事の先に、まっとうな政治が実現するとは思えない。

 安倍首相が米ニューヨークでの記者会見で、来月2日に内閣改造を行い、首相官邸の要である菅義偉官房長官とともに、麻生太郎副総理兼財務相を続投させる意向を明言した。

 「平成のその先の時代に向かって、新たな国づくりを進めていく」。そう語り、麻生氏に「土台」として政権を支えてほしいとの考えを示した。

 自民党総裁選で3選し、新たな3年の任期を得た首相が一歩を踏み出す人事である。長期政権の弊害に真摯(しんし)に向き合い、失われた政治の信頼を回復させる。その覚悟を、具体的な顔ぶれで国民に示せるかどうかが問われている。

 決裁文書の改ざんを生んだ森友学園問題、事務次官が辞任に追い込まれたセクハラ疑惑……。財務省を舞台にした数々の不祥事は、すべて麻生氏のもとで引き起こされた。

 その政治責任をとらなかった麻生氏の留任を真っ先に表明する。総裁選の論功行賞や、政権内の力関係のバランスが崩れることを恐れた内向きの判断ではないか。

 麻生氏は、総裁選で石破茂・元幹事長が地方票の45%を得たことについて「どこが善戦なんだ」と言い放った。首相への批判票ともいえる地方の声を切り捨てるかのような言動は、安倍1強政治のおごりそのものに見える。その麻生氏を無条件で登用するなら、首相もまた批判を受け止めているとは言えない。

 さまざまな政策課題に取り組む前提として、首相に求められているのは、何より公平・公正な行政の実現だ。

 財務省による文書改ざんの動機について「それが分かりゃ苦労せん」とうそぶき、当時の理財局長で国会でうその答弁を重ねた佐川宣寿(のぶひさ)氏を「適材適所」とかばい続けた麻生氏の続投は、明らかにそれに逆行する。

 内閣人事局の発足などで、官僚の幹部人事を一手に握る首相らに、権力の集中が進む。だからこそ責任も重みが増している。その自覚を首相が自ら示さなければ、政治の劣化は拡大する一方だろう。

 来年秋には消費税の10%への引き上げがある。財政再建の先送りも許されない。いずれも財務相が司令塔となる課題で、野党の協力や国民の幅広い理解を得る努力が欠かせない。

 その任に麻生氏がふさわしいとは到底言えない。

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