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 日本は、北朝鮮との不正常な関係の打開をめざすべきだ。ただ、それには主体的な構想と対話の積み重ねが要る。風向き次第で政治的な成果を焦るような外交に走ってはならない。

 米・ニューヨークで安倍首相は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長との会談を含め、関係改善への意欲を強調した。

 「相互不信の殻を破り、金氏と直接向き合う用意がある」。国連総会では「北東アジアから戦後構造を取り除くための労をいとわない」と演説した。

 安倍政権は昨年の総選挙で核・ミサイル問題を「国難」と呼んで危機を強調し、情勢が対話局面に転じてからも脅威の「基本的な認識に変化はない」(18年版防衛白書)としてきた。

 圧力一辺倒から、会談の呼びかけへ。大きな変化である。

 金氏との会談を中国と韓国は複数回こなし、トランプ米大統領も再会を調整中だ。金氏のロシア訪問も取りざたされる。

 日本が蚊帳の外にある現状は憂慮すべきだ。対話の輪に加わり、地域の緊張緩和に資する道を日本も探るのは当然だ。

 同時に、日本が後れをとる理由を直視する必要がある。朝鮮戦争の法的な当事国でない、というだけでは済まない。

 和平へ向けた独自の構想をもたず、米国の態度次第で方針を変転させる。そんな姿勢が周辺国に熟知されている。それが、存在感の低迷の要因なのだ。

 首相は金氏の対話姿勢について、日米が国際社会をリードし、圧力をかけ続けた成果だという。衝動的なトランプ外交の影響は確かに大きいが、それに追随した日本の貢献を認める声は国外に見いだしがたい。

 日本が抱く朝鮮半島の未来像と、その実現のための条件や道筋は何か。植民地支配の歴史に向き合い、未来志向の安定を築く指針は何か。ビジョンを発することが北朝鮮だけでなく、米韓中などに対しても日本の譲れない一線を示すことになる。

 まずは北朝鮮を冷徹に見つめねばならない。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の説明では、金氏は日本との対話の用意があると語ったという。融和ムードを高めたい文氏の思惑も込めた伝言とみるべきだ。

 日朝間には双方の首脳が02年に直接会い、署名した平壌宣言がある。国交正常化をめざす意思を確認した中身は、まだ色あせてはいない。

 建設的な成果を生むには、日朝間の高官協議を軌道に乗せることが大切だ。一足飛びの局面転換より、堅実に間合いを詰める思考で臨むべきだ。

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