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 今年のノーベル医学生理学賞が京都大特別教授の本庶佑(ほんじょたすく)さんに贈られることになった。

 外科手術、抗がん剤、放射線という従来のがん治療法に加え、「免疫療法」という新たな道を切り開いたことが評価された。かねて有力候補と言われてきた一人であり、受賞決定を心から喜びたい。

 本庶さんが発見した「PD―1」と呼ばれる分子は、がんが免疫細胞からの攻撃を逃れるカギとなるたんぱく質だ。

 このPD―1の働きを抑えれば、より効率的にがん細胞をたたけるのではないか――。そんな発想をもとに14年に承認された薬オプジーボは、もちろん患者によって効果の有無や程度に違いはあるが、多くの人の命を救い、生活を支えている。

 本庶さんがホームページで公開している「独創的研究への近道:オンリーワンをめざせ」と題したエッセーからは、ほとばしる情熱が伝わってくる。

 たとえば、研究の喜びについてこう記す。

 「多くの人が石ころだと思って見向きもしなかったものを拾い上げ、10年20年かけてそれを磨きあげて、ダイヤモンドであることを実証することである」

 PD―1はまさにその好例といえるだろう。

 受賞決定後の記者会見でも、本庶さんらしさを随所に開陳した。「賞はそれぞれの団体が独自の価値基準で決める。(受賞まで)長いとか待ったとか、感じていない」「(モットーは)好奇心と簡単に信じないこと。確信できるまでやる。自分の頭で考えて納得できるまでやる」

 これで00年以降、自然科学分野での日本からの受賞は、米国籍を持つ研究者を含め18人となり、米国に次いで多い。

 心配なのは、いまの日本の研究現場が本庶さんたちを生み、育てた時代と大きく変わってきていることだ。短期間で実用的な成果を出すことが求められ、独創的なテーマに挑戦しにくいとの指摘がしばしば聞かれる。

 純粋な好奇心で始めた研究が、将来、どのような成果をもたらすかは予測できない。それが基礎研究の役割であり、だいご味でもある。2年前に受賞した大隅良典さんの研究も、当初は周囲からはほとんど注目されないものだったが、長い時間をかけて花開いた。

 本庶さんにも同様の問題意識があるのか。会見で「受賞を機に基礎医学の発展が加速し、多くの研究者を勇気づけるとすれば望外の喜び」と語った。

 研究とは。その意義は。改めて問い直す機会にしたい。

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