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 いまも発生し続ける東京電力福島第一原発の汚染水を、どう処分するのか。道筋が見えない難問の解決が、いっそう遠のいたのは間違いない。

 汚染水を浄化装置ALPS(アルプス)で処理した後も、放射性のストロンチウムやヨウ素などが基準値を超えて残っていたのだ。

 東電は「浄化処理すればトリチウム(三重水素)以外の放射性物質を除去できる」としてきた。ところが、敷地内のタンクに貯蔵されている処理水89万トンのうち、基準値を上回る放射性物質を含むものが75万トンあった。6万5千トンが基準値の100倍を超えており、中には約2万倍のものもあるという。

 初期のALPSには不具合や性能不足があったほか、できるだけ長時間、ALPSを稼働させようと、放射性物質を取り除く吸着材の交換頻度を少なくした――。原因について、東電はそう説明している。

 こうした事実を早くからつかんでいたにもかかわらず、東電は積極的には説明してこなかった。「自社のサイトにデータを掲載してきた」と釈明しているが、膨大なデータの中から第三者が問題点をすくい取ることはまず無理だ。「都合の悪い問題を意図的に隠した」と批判されてもしかたあるまい。

 東電は、処理水の処分について検討する経済産業省の小委員会で経緯を報告して陳謝した。未曽有の事故の当事者として問題解決の責任を負っていることを、いまだに十分、自覚していないのではないか。

 東電に積極的な情報開示を促さなかった経産省や、トリチウムばかりに注目してきた小委員会の姿勢も問われている。問題を解決するには、さまざまな情報を集めて幅広い観点から議論することが欠かせない。そのことを再認識するべきだ。

 積み上げてきた議論の土台が崩れたいま、処分法の検討は振り出しに戻った。

 東電は今後、再びALPSで浄化して放射性物質を基準値以下にすることにしている。これまでの想定以上に時間やコストがかさみ、廃炉計画全体の進行にも影響する恐れがある。

 最大の問題は、地元との信頼関係が大きく損なわれたことである。情報開示を徹底したうえで、住民との対話の場を設けるなど、国や東電には合意形成に向けた努力が求められる。国民全体で問題を考える仕組みも工夫しなければならない。

 貯蔵タンクは2020年ごろに満杯になると政府はみているが、議論の期限を切るのは論外だ。問題の解決に近道はない。

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