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 紛争の下で用いられるのは、銃や爆弾だけではない。地域社会を破棄する「兵器」として、レイプなどの性暴力が使われている。

 世界史を通じて繰り返されてきた蛮行は、21世紀のいまなお後を絶たない。その現実に真剣な目を向け、行動をおこす契機としたい。

 今年のノーベル平和賞が、アフリカの医師と中東の女性に贈られることが決まった。ともに戦時下の性的虐待と闘う勇気と貢献がたたえられている。

 コンゴ民主共和国の婦人科医デニ・ムクウェゲさん(63)は長年、被害女性の治療に尽力している。犠牲者600万人超ともいわれる内戦のなかで、弱者の救済に半生をかけてきた。

 イラクのナディア・ムラド・バセ・タハさん(25)は、少数派のヤジディ教徒だ。過激派組織「イスラム国」(IS)に家族を殺され、自らも「奴隷」とされたが、九死に一生を得た後は果敢に世界に告発を続けた。

 異民族の対立や、利権争い。紛争の背景が何であれ、戦乱でまず犠牲になるのは女性や子どもらだ。アフリカの性暴力は、必ずしも欲求を満たすためだけではなく、わざと感染症を広げたり、子供を産めなくさせたりするためでもあるという。

 「民族浄化」という、おぞましい言葉は近年広く使われる。90年代のボスニア・ヘルツェゴビナ内戦をはじめ、最近ではミャンマーの少数派ロヒンギャが集団で迫害され、多くの性被害がおきているとされる。

 ノーベル委員会は授賞の理由として、世界の意識向上をめざしたという。紛争当事者だけでなく、見過ごしてきた国際社会の責任も問い、犯罪を終わらせる目標を呼びかけた。

 「(各国の)経済的繁栄の裏には、人生を破壊されている無数の女性がいることを知ってほしい」。ムクウェゲさんはそう語ったことがある。中東やアフリカに資源を頼りながら、その地の人間の苦難に思いをはせない国際社会の視野の狭さを考えずにはいられない。

 日本を含む国際社会は、もっと現実を直視するべきだろう。シリア、イエメン、南スーダンなど、いまも収拾が見えない戦乱の下には、見えない性暴力や人権侵害が膨大にある。

 国連を中心とする国際機関を通じた貢献策を、もっと広げられないか。紛争の停止をめざす国際調停と並行して、日本には医療ケアなどの人道支援に力を注ぐ余地があるはずだ。戦争犯罪を罰する国際司法の取り組み強化も求められている。

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