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 特定の民族や人種に対するヘイトスピーチを規制する条例が、東京都議会で成立した。

 2年前に対策法が施行されたが、ヘイト行為の根絶は遠く、8月には国連の人種差別撤廃委員会が日本政府に対し、対応の強化を勧告している。

 そんななか、差別的言動にあふれる集会・デモが相変わらず繰り返される東京で、都道府県レベルでは初となる条例が制定された意義は大きい。

 骨子は、ヘイトスピーチが行われるのを防ぐため、都が管理する公園や施設の利用を制限する基準を定める▽ネットに投稿された文章・動画の削除要請や投稿者の氏名の公表など、差別的言動を拡大させない措置をとる▽その場合、正当な表現活動を妨げることのないよう、学識経験者でつくる審査会の意見を聴く――というものだ。

 先行する大阪市や川崎市の対応にならったもので、おおむね妥当な内容といえる。だが持ち越された課題も少なくない。

 ひとつは実効性だ。

 たとえば、施設利用に関する川崎市のガイドラインに対しては、要件が厳しく、実際に制限するのは難しいのではないかとの指摘がある。大阪市条例も、「氏名の公表」を定めてはいるものの、ネットへの投稿者を市が特定するのは困難で、絵に描いた餅になっている。

 都はこうした問題をどう克服するつもりなのか。しかし議会では「具体的な基準や運用は今後詰める」との説明に終始し、議論は深まらなかった。

 逆に、規制が過剰に走ることへの懸念もぬぐえない。

 生煮えのまま知事の下での検討にゆだねられた事項が多いため、その結果次第では、表現の自由や通信の秘密といった、憲法上の重要な権利を侵害する事態を招きかねない。

 ゆきすぎにならないよう目配りしつつ、人間の尊厳を傷つける行為をいかに確実に抑え込むか。都の本気度とバランス感覚が問われるのはこれからだ。

 条例は、五輪・パラリンピックの開催都市として、五輪憲章がうたう人権尊重の理念を浸透させることを目的に掲げ、LGBTなど性的少数者への差別を禁ずる規定も盛りこんだ。

 だが、ヘイト行為を許さず、多様な生き方を尊重する社会を築くのは、五輪とは関係なく、すべての道府県・市町村が考えるべきテーマだ。

 ヘイト対策法は、地域の事情に応じた施策を各自治体に求めている。試行錯誤を重ねつつ、首都の取り組みも参考にしながら、着実に歩を前に進めたい。

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